大阪樟蔭女子大学公式サイト 学長だより 北尾悟

ニューノーマル「新常態」とは?
~アフター いや ウィズ コロナの時代~

 政府によって発令された特措法に基づく「緊急事態宣言」は、5月25日に全国で解除となりました。しかし、その後も日本国内での感染者ゼロの日はなく、社会経済活動の再開を望みつつ、何となく不安な日々を皆過ごしていることと思います。大学も一部の実験実習実技科目からキャンパス内での授業が行われるようになりましたが、原則として遠隔(オンライン)授業を継続し、感染リスクを少しでも回避する方策を取りながら対応しています。

 政府の専門者会議から「新しい生活様式」の実践例が提言されました。ニューノーマル「新常態」という言葉もしばしば耳にするようになりました。実践例には、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いという感染防止の3つの基本をはじめ日常生活のいろいろな場面での生活様式が示されています。その一例に、食事の際は「料理に集中、おしゃべりは控えめに」があります。1人なら構わないのですが、家族や友人と一緒に食事をする場合は、何か寂しいですよね。美味しい料理も味気なくなってしまう気分です。食事を味わうことで会話が弾み、コミュニケーションも進むのですが。。。。。。
 ただ、今回の新型コロナウイルス、ちょっと今までのウイルスとは違うようです。これまで人に感染するコロナウイルスは、今回の新型を含めて7種類あります。そのうちの4種類は一般的な風邪の原因の約10~15%くらい占めており、ほとんどの場合は軽症に終わります。「新型」とは言え、人類がこれまで遭遇したことのない全く「未知」のウイルスではありません。ですからウイルスの基本的な構造や感染から発症までの仕組みはわかっているので、それに応じた治療薬やワクチンの開発が進んでいます。
 しかしながら、感染しても症状が現れない、もしくは軽症で自覚がないということが、今回の新型ウイルスの一番厄介な点だと思います。そして治癒した人のなかにはあまり期間を空けずに再び感染する例も見られます。こういう事例からも健康な(健康そうに見える)人も感染拡大を引き起こす原因になるので、3つの基本をはじめとする「新しい生活様式」を実践していくしかないということです。「アフター、あるいはポスト」コロナと言う人もいますが、解明されていないことも多く、RNAウイルスは変異しやすいので、治療薬やワクチンの効果がすぐに現れることはなさそうです。このウイルスとは末永く付き合っていくしかないと感じますので、「ウィズ」コロナの表現が的確であり、「ウィズコロナ時代」にどう私たちは生きていくのかを考えるべきだと思います。

 私たちの日常は大きく変わりました。学生の皆さんはオンライン授業が継続しキャンパスに足を運ぶこともできず、友人とも直接会って話すことも難しい状況です。外出の自粛とともにスポーツイベントの中止、アルバイトもできない状態が続きました。ちょっと前までは考えられなかった状況となり、大きく様変わりした日常への対応に追われ、精神的にも不安定な人もいるでしょう。当たり前のことができなくなり、ストレスを感じている人も多いでしょう。SNS上ではいろいろな意見や発言が飛び交っていますが、中には自分本位で他人を傷つけるものも散見されます。普段なら友人や知人との何気ない会話のやり取りで、ちょっとした相談や意見交換ができますが、現状ではそういうことが難しいこともあるとは思います。ですが、こういう状況だからこそ、人としての立ち居振る舞いを基本とした「人間力」が求められのではないでしょうか?
 これまでの世界観、価値観が大きく変わる可能性があります。多くの人がこれまで常識としていたことが通用しなくなることが予想されます。非常事態、有事の際には、自分というものをしっかりと認識し、自分自身の中に倫理的そして美的な価値判断の軸を持つことが必要ではないでしょうか?自分の価値判断のものさしを持ち、周りの状況に流されず自らの人生を歩んでいかねばならないでしょう。

 またこういう状況だからこそ、人と人との関わりがより大事になります。この困難な状況を周りの人たちと互いに支え合い乗り越えていかねばなりません。人との関わりにある程度の制限があるので、コミュニケーションの質が重要となってきます。それには、豊かな言語表現のスキルが必要で、話し方も含めた日々の研鑽がより強く求められると思います。

 樟蔭学園では「樟蔭美」をコンセプトとして学園全体で教育プログラムを進めようとしています。大阪樟蔭女子大学は2017年にグランドデザイン「美 Beautiful 2030~美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~」を提示し、学生の皆さんを教育面のみならず、学生生活全般にわたってサポートし、卒業後、美的センスを持ち社会で活躍、そして貢献できる女性を育てようと努めています。学生の皆さんにはキャンパスに集うようになれば、さらに樟蔭の良さを感じつつ成長してもらいたいものです。皆さんの素敵な笑顔を見ることを楽しみにしています。

 我が家の柴犬もこれまでの日常とは違うことを察知しているようで、時々夜中に遠吠えをします。ヒトと犬ではウイルスは感染しないようなので、彼とのソーシャル、いやフィジカル・ディスタンスを縮めてコミュニケーションを図ろうかと思います。

president0618.jpg令和2年6月18日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

くすのきの葉蔭に集うあなたへのメッセージ  ~遠隔授業を始めるにあたって~

 4月に入学された新入生の皆さん、進級された在学生の皆さん。すでにご周知のように、47日(火)に政府によって出された特措法に基づく「緊急事態宣言」と特定都道府県となった大阪府の要請を受け、大学のホームページでお知らせしたように530日(土)までのキャンパスへの立ち入り禁止を決定しました。

 しかしながら、その後、政府見解でも非常事態宣言の延長が示唆され、関西、大阪の状況も予断を許さないと判断し、皆さんの健康と命を守るため、自らが移動することによる感染拡大を防ぐため、一刻も早い平常の生活を取り戻すため春期、88日(土)まで原則としてすべての科目で遠隔授業(オンライン授業)を実施することに決めました。つまり、春期の授業期間中は小阪キャンパスへの立ち入りを禁止としました。

 この措置によって、これまで大阪樟蔭女子大学がもっとも大切にしてきた学生の皆さんと私たち教職員との出会いや交流を通した「面倒見の良さ」の実現がほとんどできなくなっています。自分の夢と目標を持って大学生活を送ろうとしているあなたから、いろいろな経験を通して学ぶ機会を奪い取ったコロナウイスルとその感染拡大に対して、やり場のない怒りを覚えます。それはあなたも同じだと思います。学生の皆さんの立場を考えると、前例のない状況への戸惑い、そして将来への不安を覚えているに違いないと思います。

 新入生は新たに始まる学生生活をスタートできず、小阪キャンパスでの対面授業を経験できず、友だちをつくる機会も奪われています。在学生も同じ状況です。専門分野での学びが進んでいき、研究テーマを深めるためにゼミや研究室に行くことすらできない状況です。学友と勉強以外のファッションや恋人の話など楽しく語らうことを妨げられ、すべてのクラブやサークルの活動も停止されて、キャンパスは静まり返っています。またアルバイトもできなくなり生活費が心配な人もいるでしょう。そして最上級生は、これまでと様相が違う就職活動に戸惑っていることと思います。相談会や採用面接など対面での行事が中止や延期となり焦っている人もいるでしょう。

 このような状況ではありますが、私たち大阪樟蔭女子大学は、大学教育を皆さんに提供し学修の場を確保していかねばなりません。大学は、原則として5月11日(月)から88日(土)まで「インターネットを利用した遠隔授業」を本格的に実施することを決定しました。これまで実施してきた対面授業と比べると、インターネットを利用した遠隔授業にはさまざまな制約が想定されます。でも私たち教職員は、あなたのために精一杯努力しようと決心しました。初めての取組みであるため、最初はうまくいかないことがあるかもしれませんが、少しでも良い授業を提供したいと考える教職員と、授業の開始を待ちわびている学生の皆さんが、どうか力をあわせてこの困難を乗り越えてほしいと願っています。

別に通知した「遠隔授業に対するメッセージ」も一読して、授業準備を行ってください。先にお知らせしました「遠隔授業に関する支援」として3万円を支給することとしました。いろいろなご意見があるかと思いますが、理事長の思いとして、少しでも皆さんが円滑に受講できるように決定していただきました。私たち教職員はその意を受け、今後しっかりと授業を提供できるよう努めていきます。受講登録、教科書販売などこれまでも不明な点があり質問など大学に寄せていただきましたが、今後も何か分からないこと、不安に思っていることがありましたら遠慮なく、アドバイザー、科目担当者、担当部署などに相談してください。

そして、どうしても皆さん、あなたにお伝えしたいことがあります。ほんの半年前までこんな世界が来ようとは皆思っていなかったと思います。突然、新型コロナ感染症の拡大という災難が降りかかってきた!と思っている人が多いと思います。しかしコロナウイルスの存在は前から知られていました。感染症対策など公衆衛生のノウハウも人類は蓄積していました。けれども感染拡大が起こりました。なぜでしょう?それは、我々人類の驕りが原因だと私は思います。歴史は繰り返します。14世紀にはヨーロッパを中心にペスト菌が猛威をふるい、感染症により1億人が命を落としたと推計されています。時代が移りいきましたが、今回の新型コロナウイルス感染の場合、グローバル化に伴い全世界が等しく災難に見舞われています。どんなに人類が優れているといっても、それを超えて自然の存在ははかり切れないくらい大きいのです。大自然の中では人類は単に1つの生命体に過ぎないことを自覚することが必要です。その前提に立って、わたくしたち一人一人としてこの困難に立ち向かっていかねばならないのです。

まずあなたに出来ることとして、不要不急の外出は避け、自分自身を見つめ直す良いきっかけとしてください。なぜ自分自身を見つめ直すのか?それは、これから大きく世界観、価値観が変化するかもしれないからです。これまでの常識が覆ることも予想されます。その際に右往左往しないよう、この機会に自分自身を磨き、知識、教養、人格の向上に努めるよう心がけてください。このことがあなた自身の成長に繋がりますし、社会に対する責務でもあるからです。

くすのきの葉陰に集うあなたへ。私たち教職員はあなたが充実した学生生活を送ることが出来るよう、精一杯の努力をします。笑顔が素敵なあなたと一刻も早く小阪キャンパスで会えることを念じています。しばらくは外出が制限され自粛生活が強いられますが、いつか感染終息の日がやってきます。それまでは感染防止に細心の注意を払いながら、遠隔授業を中心に時間を有意義に過ごしてください。

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令和2年5月2日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

令和2(2020)年度 入学式式辞

 本日晴れて大阪樟蔭女子大学大学院ならびに大阪樟蔭女子大学に入学された新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。桜の花が満開に向かう中、すべての教職員とともに、皆さまの入学を心から歓迎いたします。
 そして、皆さまを今日まで育て、勉学を支えてこられたご家族をはじめ関係の方々にも、心よりお慶びを申し上げます。

 新入生の皆さまが入学された大阪樟蔭女子大学の運営母体である学校法人樟蔭学園は、1917年、大正6年に設立された樟蔭高等女学校がその歴史の始まりです。創立以来100年を超えた歩みを刻んでいます。また、大学も昨年、創立70周年という節目の年でした。次の時代に向けて皆さまと共に、これからの新しい樟蔭物語を作っていきたいと思います。

 昨年11月に大学創立70周年記念フォーラムを開催しました。そのフォーラムのタイトルは、「今、なぜ『美』の感性・意識が求められるのか?~私の"樟蔭美"がこれからの時代を生きる軸になる~」でした。ここで示した"樟蔭美"とはどういうものなのでしょうか?

 樟蔭学園では、創立者・森平蔵の思いである建学の精神、「高い知性と豊かな情操を兼ね備えた社会に貢献する女性の育成を目指す」が、100年経った今でも色褪せることなく受け継がれています。この間、10万人を超える卒業生を社会に輩出し、様々な分野で活躍されている方が多くおられます。時代が移りかわり、今後AIをはじめ先端技術が高度化し、社会のあり様が大きく変化しようとも、樟蔭で培ってきた精神は、これからも自信をもって評価されるべきものだろうと思います。

 実際、記念フォーラムのパネルセッションでは、在学生、卒業生が参加し、自分の夢・目標をしっかりと表現してくれました。在学生は現在、興味があり取り組んでいること、樟蔭での学び、そして将来に向けた抱負について、自分軸を定め前向きな気持ちで学生生活を送っている様子を楽しそうに話してくれました。また卒業生は、樟蔭で学んだこと、人とのつながり、これらが現在の仕事にも繋がっていることを在学生へ伝えてくれました。皆、日常生活を送るうえでの判断基準、ものさしを持ち、考え方、価値観を身に付けていることを示してくれました。まさしくこれが"樟蔭美"であると実感しました。フォーラムでは"私たちの樟蔭美"というテーマに沿ったポスターセッションも行い、すべての学科の学生が、各々、様々な場面で活動している様子を発表してくれました。すごく頼もしく感じ、嬉しい気持ちになりました。

 これからの世の中、皆さまが社会で活躍する次の時代は、今よりもっとよくなってほしいと願っています。先ほど述べたAIをはじめ多くの分野で科学技術が進展、高度化していき、生活はどんどん便利になっていくでしょう。

 便利になることは良いことではありますが、その便利さに甘えてしまうと、身体は元より物事に対する考え方、感受性が退化してしまう恐れがあると私は思います。例えば、皆、携帯電話、スマートフォンを持っていますよね。いろいろな情報を瞬時に手に入れることができ、大変便利です。でもいつでもどこでもアクセスできるので、何か分からない時には安直に答えを求めようとしていませんか?深く物事を考えるよりも、直ぐに正解を求める風潮になってきているのでは、と危惧しています。深い考察なしに結果だけを求めると、もし何か問題が生じた場合に必要とされる解決能力が減退していくでしょう。今後、益々、価値観が多様化し正解のない問いがあふれる世の中になると予想する人もいます。となるとフォーラムに参加した在学生や卒業生のように、誰かの意見に流されず、自分らしい生き方の軸を持つ必要があります。

かの偉大なファッションデザイナー、ココ・シャネルはこう言っています。

「美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる」

大阪樟蔭女子大学は、2030年に向けたグランドデザインを提示しました。そのスローガンは、「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」です。ここでいう「美」とは単に外見上のものではなく、むしろ内面から醸し出される美しさであり、教養があり立ち居振る舞いに品がある洗練された「樟蔭美」を意図しています。フォーラムに参加した先輩たちのように自分軸を持ち、知性・情操・品性に裏打ちされた芯のある人に成長していくよう、これからの樟蔭での学生生活を送ってもらいたいと思います。皆さまが成長できるよう、私たち教職員一同、様々なプログラムを準備しサポートの充実を図っていきます。

 コロナウイルス感染拡大の中、様々な情報が飛び交い、行動様式をはじめ「人間力」が問われています。これまで培ってきた樟蔭美をさらに磨きをかけ、新しい時代に即した教育展開を図っていく必要があると感じています。新入生の皆さまには、私たちの思いを受けとめ、対応してもらいと思います。そこで、外出や人の集まりが制限されることもあり、一つお願いしたいことがあります。

 それは「読書」です。本を読むことによって自分が知らないことを吸収してください。文章を追うことにより、様々な人に出会い、様々な場所を旅し、様々な考えを知ることができます。知らない言葉や表現に触れ、コミュニケーション能力も身につくことにもなります。「読書」を通して、価値観や世界観が養われ、自分軸を作ることに繋がっていくと思います。

 自分軸を作るということは、あなたらしくということです。

「美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる」

 新入生の皆さまが、「読書」を通して自分軸の形づくりを開始し、通常生活に戻ったときに、樟蔭美、「美 Beautiful」な充実した学生生活を送ることを願って、私の式辞の結びといたします。

 皆さま、ご入学、まことにおめでとうございます。

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令和2年4月1日    
大阪樟蔭女子大学 学長
北尾 悟       

令和元(2019)年度 学位授与式 式辞

 令和元年度の学位授与式を挙行するにあたり、大阪樟蔭女子大学の教職員を代表して大学院修了生ならびに学部卒業生の皆さまにお祝いの言葉を述べさせていただきます。学位授与、まことにおめでとうございます。めでたくこの日を迎えられた皆さまを心からお祝いいたします。そして、皆さまの学生生活を陰ひなたになって支えてこられたご家族をはじめ関係の皆さまと喜びを分かち合いたいと思います。

 本来ならこの日は、令和最初の学位授与式として、ご家族の皆さまをはじめ教職員や来賓の方々など大勢が見守るなか、学位記を手渡し祝福したかったところです。ただ新型コロナウイルスの感染終息の見通しが立たない状況で、皆さまとお集まりになる多くの方々の健康を守り感染拡大のリスクを少しでも抑える観点から、100年会館において一堂に会して式典を行うことは難しいと判断しました。人生における1つの区切りである晴れの舞台を提供できず、まことに申し訳ございませんでした。

 今、世界中を席捲(せっけん)する勢いのコロナウイルスをはじめウイルスは、単独では増殖できません。子孫を残すには他の生き物の細胞に居候して、その生き物の力をうまく利用して生きています。生き物、つまり生物なのかそうでない無生物なのか、専門家でも意見が分かれるくらい巧妙な方法で地球上に生存しています。コロナウイルスの場合、くしゃみや咳など飛沫から主に呼吸器系の細胞にとりつき増殖すると言われていますので、とにかく大人数が密集する状況を避ける必要があります。

 人が集まることに注意を払わなければならないので、多くのイベントが中止となりました。となると心理的に人と会うことを自粛するムードとなり、コミュニケーションがとりづらくなることが懸念されます。コロナウイルス感染拡大が起こらずこれまで通りに世の中が流れたとしても、最近の風潮としてコミュニケーションがうまくとれず様々な問題が生じています。自粛ムードとなれば益々、コミュニケーション能力が問われるのではないでしょうか?いくらネット環境が良くなったとはいえ、他者と直接会って話す機会が少なくなることでコミュニケーションがとりづらくなり、社会生活の様々な場面に影響を及ぼすことは必至だと思われます。

 私はこれまで入学式や学位授与式での式辞、あるいは大学ホームページの学長だよりにおいて、コミュニケーション能力の重要性を述べてきました。4年前の入学式においても「自分」以外の人達とのコミュニケーションを図るためにも、まず「自分」とはどういう人間なのか、つまり「自分自身」を知るよう、学生時代に絶えず悩みながら考えてください、と伝えました。どうでしょうか?「自分自身」がわかりましたか?

 おそらくほとんどの人は答えが見つからないでいるでしょう。告白しますが、私自身も自分がどういう人間なのか、まだはっきりとわかっていません。一生、悩み考え続けるテーマだと思います。

 コミュニケーションを図ることに関しては、経験を重ねていくにつれて私なりにこう考えている、こういうふうに対応していると、皆さんへ伝えることが増えてきました。その1つに「相手の良い面を認める」ことが挙げられます。どんなにコミュニケーションが取りづらい人でも、どこかに良い面が必ずあります。相手のことを100%すべて良く見ようとしなくて構いません。ただ、自分より良い面、優れている面が、何かしらどんな人でも必ずあるはずです。それを見つけ理解し付き合っていくうちに、コミュニケーションが徐々に図られていくと思います。ほんの一部でも良いからお互いを認め合い、リスペクトすることがコミュニケーション能力向上の秘訣だと思います。

 また、不要不急の集まりを控えるようにとの要請も出ている状況を逆手に取り、じっくり本を読む、読書にいそしんでみてはいかがでしょうか?コミュニケーション能力を高めるには、実際に他者に会い他者を知る、そしていろいろな知識を得て、自分を知り価値観を築いていくことが通常考えられますが、本を読むことによって、様々な人に出会い、様々な場所を旅し、様々な考え方を知ることができます。そしてボキャブラリー、語彙の力も養われます。手っ取り早くコミュニケーション能力の基礎の基礎を学ぶことができ、自分自身を知るきっかけにもなり、価値観が養われ世界観も広がるはずです。

 かのマイケル・ジャクソンも言っています。「僕は読書が大好きだ。もっと多くの人に本を読むようにアドバイスしたい。本の中には全く新しい世界が広がっているんだよ。旅行に行く余裕がなくても、本を読めば心の中で旅をすることが出来るんだ。」と。

 昨年、大阪樟蔭女子大学は創立以来70年という歴史を刻みました。樟蔭学園も1世紀を超えた歩みを進めています。歴史と伝統を重んじながら、大学では、2030年に向けたグランドデザインを提示し、「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」をスローガンに掲げました。ここで言う「美」「美しい」とは外見のみならず、むしろ内面の美しさを意図しています。その内面の美しさを通して社会で活躍する人を育てることが大阪樟蔭女子大学の使命だと考えています。

 地球規模でのコロナウイルス感染拡大という閉塞感が漂うなか、また将来予測困難な時代が到来すると言われている昨今、より一層、自分の物差し・羅針盤を基に価値観を磨き続け、クスノキのように内なる輝きを発する人を育てることが求められます。1人でも多くの修了生・卒業生が社会で活躍できるよう、これからも社会に認められ存在感のある大学へと発展するよう努めてまいります。

 今年は暖冬でもうしばらくすると桜が早や開花すると予想されています。皆さまも「内面の美」を磨き続け、自分の希望の花を咲かせてください。

 「相手の良い面を認め、コミュニケーション能力を高める意識を持ち続ける」、そしてコミュニケーション能力を高める基本の基本として「本を読む」、ということを皆さまへの「はなむけ」とします。そして「美 Beautiful」な人生を歩まれることを心より祈念し、式辞の結びといたします。

 皆さま、改めて学位授与、まことにおめでとうございます。

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令和2年3月14日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

現状を変えるには

 令和最初の新年、早くもひと月が過ぎようとしています。
「令和」~Beautiful Harmony~。明日への希望とともに、ひとりひとりが大きな花を咲かせる、まさしく「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」一年にしたいものです。

 さて一年のはじめには多くの人が今年の目標、今年はこういう年にしよう!と気持ちを新たにしていることと思います。これまでの反省を踏まえて変わろうとする気持ちを持つ人も多いでしょう。でもなかなか現状から人間は変わることができないものです。では、どうしたら変わることができるようになるのでしょうか?

 経営コンサルタントの大前研一さんの言葉がある新聞に紹介されていました。それによると、人間が変わる方法は3つしかない、とのこと。一つ目は時間配分を変えること。二つ目は住む場所を変えること。そして、三つ目は付き合う人を変えること、だそうです。

 紹介された逆の順で考えてみました。まず「付き合う人を変える」というのは、確かにそうでしょう。人は多くの人たちとの人間関係の中で生活しています。強固な信念の持ち主でない限り、周りの人たちの影響により生活様式や考え方が左右されます。当然、付き合う人を変えると自分が変わる可能性は高いでしょう。でも現実、なかなか難しいと思います。現在の人間関係を断ち切って新しい人やグループと関係を持って付き合うことは簡単なことではないと思います。少し距離を置くことはできても、特に付き合いが深い友人や職場などのグループから影響を受けず、自分が変わることが出来るほど関係を浅くすることは至難の業でしょう。
 次に「住む場所を変える」はどうでしょうか?新たな環境により気分転換になり、心の切り替えや新たなスイッチが入り自分が変わるきっかけになるでしょう。しかし、ある程度のお金と時間が必要です。引っ越しとなるとそう簡単にいかない人が多いでしょう。
 では残る一つ「時間配分を変える」はどうでしょうか?大前氏も「どれかひとつだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的」としています。これだといろいろな条件や周りの環境に左右されず、自分ひとりで変わることができると思われます。

 私自身も状況に流されている、マンネリに陥っているという気持ちが昨年からだんだん強くなってきて、自分自身を変えたいと少し焦っていました。そこで元旦から「変えた」ことがあります。それは非常に単純なことで、「0時前に寝る、そして6時に起きる」ということです。以前は、だらだら真夜中0時を回って1時2時になってもグダグダいろいろなこと(雑誌を読んだり、スマホをいじっていたり)をしていましたが、どんなことがあっても日付が変わる前にベッドに入ることにしました。そしてどんなに眠くても目覚ましをセットして朝6時に起きる、と生活リズムを変えることとしました。生活リズムを変えることも「時間配分」になりますよね。これは、休日前や休日でも同じです。
 まだ人に言えるほどの効果は実感できませんが、少なくともこの1ヶ月弱、例年この時期には風邪気味になったり気持ちが散漫になる日があったりするのですが、今のところ、そういう状況にはなっていません。生活のリズムができたので身体のリズム感が出てきたのかもしれませんし、気持ちが前向きになったような気がします。「時間配分を変える」ことは、勉強や仕事のやり方や順序などを変えることと捉え実行することが難しい、と感じる人もいるかもしれません。もちろん、これらのことは非常に大事なことですし、変えることで大きく前進することにつながるでしょう。でもこれらも周りの環境などにより障壁があり実現が困難なこともあるでしょう。20200128.jpgでも「生活リズム」を変えることであれば、周りに関係なく自分一人で変えることが可能です。いかがでしょうか?まずは簡単にできることから始めてみてはいかがでしょうか?

 朝6時に起きるのは、我が家の愛犬が起こしにくることが大いに助けになっていることを正直に告白します。6時間は寝ないと一緒に朝の散歩はきついので、0時には寝るということになっているのです・・・

北尾 悟

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