大阪樟蔭女子大学公式サイト 学長だより 北尾悟
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平成30(2018)年度 入学式式辞

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 本日晴れて大阪樟蔭女子大学大学院ならびに大阪樟蔭女子大学に入学された新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。すべての教職員とともに、みなさんの入学を心から歓迎いたします。
 そして、みなさんを今日まで育て、支えてこられたご家族をはじめ関係のみなさまにも、心よりお慶びを申し上げます。
 また、後援会、同窓会をはじめご来賓のみなさまにはご多用のところをご臨席賜りまして、厚く御礼を申し上げます。

 新入生のみなさんが入学された大阪樟蔭女子大学大学院ならびに大阪樟蔭女子大学の運営母体である学校法人樟蔭学園は、1917年、大正6年に設立された樟蔭高等女学校がその歴史の始まりです。昨年、創立100周年となり、本年から次の100年に向けた歩みがスタートします。これから、みなさんと共に、新しいページを作っていきたいと思います。

 さて、昨年来、日本人の読書量が低下しているというニュースが頻繁に報道されるようになりました。約半数の日本人が1ヶ月に1冊の本も読まないと言われています。その背景として、スマートフォン(スマホ)の普及が挙げられます。スマホの利用時間が増える一方、読書量は減少しているというデータがあります。そして若い世代の人たちを中心にスマホの普及に伴い、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が急速に広まっています。このSNSは、瞬時に短いメッセージを発信する必要があるため、短文化や省略化の文章表現が求められ、「読書量の減少」とともに「長文表現力の低下」も懸念されています。
 脳科学者である東北大学・川島隆太教授によれば、スマホの操作中では論理的な思考を司る大脳の前頭前野が眠っている状態になっている、とのことです。

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 このような話を聞くと、「スマホを操作する時間を短くして読書をしなさい」ということ言いたいのですね、と思われるでしょう。結論としては、そういうことなのですが、では、論理的な思考をするのに、なぜ読書を勧めるのか。逆に言えば、読書をするとなぜ論理的な思考力が養われるのか、について考えてみたいと思います。

 SNSによる人とのつながりは、「今、ここ、この瞬間」が大事であり、そのときの話題で盛り上がっています。もちろん、「今を大切にする」ということを否定はしません。けれども、そこでは、過去・現在・未来といった長期的な時間軸や視点での考えは、ほとんどありません。
 論理的に物事を考える、ひいては発想力を豊かにするには、過去、つまり歴史を知ることが重要になってきます。なぜなら、人類の経験してきた多くの歴史に関する知識を得ることで、現在に対する認識が高まります。そして、その認識を通して未来への展望を開くことができます。
 過去を振り返り思い出すことで、自らの連続性を確かめ、これから生きていく活力を高める回想法という中高年世代を中心とした心理療法があります。若い世代の人たちにとっても同じことが言えると思います。過去、つまり歴史を振り返り、現在の立ち位置を確認することによって、将来の方向性が見えてくることになるのです。「今、ここ、この瞬間」に没頭していると、この瞬間の延長でしか未来を捉えることができません。過去、歴史を振り返ってみることで、紆余曲折を経て現在の自分の姿や社会の形があることを知ることができます。そうした歴史感覚があってこそ、未来への想像力は鍛えられると私は思います。

 では、過去、歴史を振り返り、知識を蓄えるにはどうすれば良いのでしょうか?もちろん、自分自身のこれまでの人生の振り返りは行って欲しいですが、付け加えて、もっと広い視野で、また色々なアプローチから過去、歴史を振り返り、論理的思考や発想力を高めていく必要があります。
 どうすれば良いのでしょうか?
 それは、「読書」です。

 文字や活字になっている書物は、当然のことながら過去のことが書かれています。文字や活字を目で追い、時には物思いにふけっても良いでしょう。いろいろと考えてみるという習慣を通して、論理的思考能力とともに、表現力も高まり、結果として、人とのコミュニケーション能力も自然と兼ね備えることができると思います。

 実は今日、みなさんに一番伝えたかったことは、「歴史を知る」ということなのです。歴史を知る手段として、一番簡単な方法が「読書」なのです。読書を通して先人たちの思い、考えを知ることで、今の自分の生き方を考える、そして将来、未来のことに思いをめぐらす。そんな時間を、ここ樟蔭の学生時代に味わってもらいたいと思います。

 アイフォーン(iPhone)で知られるアップル社を設立したスティーブ・ジョブズ氏も、こういう言葉を残しています。
「先人達が残してくれたあらゆるものに感謝しようとしてきた。そしてその流れに何かを追加しようとしてきた。そう思って私は歩いてきた。」

 「スマホの時間を短くして読書をしましょう」という話に、スマホを世の中に送り出したジョブズ氏の言葉を引用することに少し違和感を覚える人もいるかもしれません。しかしながら、彼の読書量は半端なものではなかったそうです。豊富な読書を通して、先人達が残してきた歴史を知り、世の中の価値を変えていくインパクトのあることを追い求めてきた結果として、スマホが生まれたのです。ジョブズ氏も現在までの過去のこと、つまり歴史を知る上で、読書が大事ということを否定しないでしょう。

 大阪樟蔭女子大学では昨年、建学の精神を踏まえ、グランドデザインを提示しました。「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」です。ここでいう「美」とは、単に外見上のものではなく、むしろ内面から醸し出される美しさであり、教養があり立ち居振る舞いに品がある洗練された「美」を示しています。
 歴史を知るために多くの書物に触れることで、内面の美を磨いてほしいと思います。読書を通して、自分自身の美しい種を見つけ、それを育て、花を咲かせてください。花を咲かせる時期は卒業後でも構いません。少なくとも樟蔭で過ごすこのときに、美しい種が発見できるよう、われわれ教職員もできる限りのサポートをします。

 結びに、新入生の皆さんが、読書から歴史に関する知識を蓄え、多くの友人を創り、健康で充実した学生生活を送ってくださることを願って、私の式辞といたします。
 みなさん、ご入学、まことにおめでとうございます。

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平成30年4月1日
大阪樟蔭女子大学 学長
北尾 悟

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