大阪樟蔭女子大学公式サイト 学長だより 北尾悟

現状を変えるには

 令和最初の新年、早くもひと月が過ぎようとしています。
「令和」~Beautiful Harmony~。明日への希望とともに、ひとりひとりが大きな花を咲かせる、まさしく「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」一年にしたいものです。

 さて一年のはじめには多くの人が今年の目標、今年はこういう年にしよう!と気持ちを新たにしていることと思います。これまでの反省を踏まえて変わろうとする気持ちを持つ人も多いでしょう。でもなかなか現状から人間は変わることができないものです。では、どうしたら変わることができるようになるのでしょうか?

 経営コンサルタントの大前研一さんの言葉がある新聞に紹介されていました。それによると、人間が変わる方法は3つしかない、とのこと。一つ目は時間配分を変えること。二つ目は住む場所を変えること。そして、三つ目は付き合う人を変えること、だそうです。

 紹介された逆の順で考えてみました。まず「付き合う人を変える」というのは、確かにそうでしょう。人は多くの人たちとの人間関係の中で生活しています。強固な信念の持ち主でない限り、周りの人たちの影響により生活様式や考え方が左右されます。当然、付き合う人を変えると自分が変わる可能性は高いでしょう。でも現実、なかなか難しいと思います。現在の人間関係を断ち切って新しい人やグループと関係を持って付き合うことは簡単なことではないと思います。少し距離を置くことはできても、特に付き合いが深い友人や職場などのグループから影響を受けず、自分が変わることが出来るほど関係を浅くすることは至難の業でしょう。
 次に「住む場所を変える」はどうでしょうか?新たな環境により気分転換になり、心の切り替えや新たなスイッチが入り自分が変わるきっかけになるでしょう。しかし、ある程度のお金と時間が必要です。引っ越しとなるとそう簡単にいかない人が多いでしょう。
 では残る一つ「時間配分を変える」はどうでしょうか?大前氏も「どれかひとつだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的」としています。これだといろいろな条件や周りの環境に左右されず、自分ひとりで変わることができると思われます。

 私自身も状況に流されている、マンネリに陥っているという気持ちが昨年からだんだん強くなってきて、自分自身を変えたいと少し焦っていました。そこで元旦から「変えた」ことがあります。それは非常に単純なことで、「0時前に寝る、そして6時に起きる」ということです。以前は、だらだら真夜中0時を回って1時2時になってもグダグダいろいろなこと(雑誌を読んだり、スマホをいじっていたり)をしていましたが、どんなことがあっても日付が変わる前にベッドに入ることにしました。そしてどんなに眠くても目覚ましをセットして朝6時に起きる、と生活リズムを変えることとしました。生活リズムを変えることも「時間配分」になりますよね。これは、休日前や休日でも同じです。
 まだ人に言えるほどの効果は実感できませんが、少なくともこの1ヶ月弱、例年この時期には風邪気味になったり気持ちが散漫になる日があったりするのですが、今のところ、そういう状況にはなっていません。生活のリズムができたので身体のリズム感が出てきたのかもしれませんし、気持ちが前向きになったような気がします。「時間配分を変える」ことは、勉強や仕事のやり方や順序などを変えることと捉え実行することが難しい、と感じる人もいるかもしれません。もちろん、これらのことは非常に大事なことですし、変えることで大きく前進することにつながるでしょう。でもこれらも周りの環境などにより障壁があり実現が困難なこともあるでしょう。20200128.jpgでも「生活リズム」を変えることであれば、周りに関係なく自分一人で変えることが可能です。いかがでしょうか?まずは簡単にできることから始めてみてはいかがでしょうか?

 朝6時に起きるのは、我が家の愛犬が起こしにくることが大いに助けになっていることを正直に告白します。6時間は寝ないと一緒に朝の散歩はきついので、0時には寝るということになっているのです・・・

北尾 悟

大学創立70周年記念フォーラムを終えて   ~伝えたい樟蔭の学び~

 11月17日(日)、大阪樟蔭女子大学創立70周年記念フォーラム「今、なぜ「美」の感性・意識が求められるのか?」~私の"樟蔭美"がこれからの生きる軸になる~を開催いたしました。当日、小春日和の穏やかな日曜にも関わらず、遠方からの方を含め多数のご参加に感謝しています。

 このフォーラムは、リアルな学生および卒業生の姿を通して、歴史と伝統に裏付けされた「大阪樟蔭女子大学の学び」に共感していただくことを目的としました。その歴史と伝統とは「建学の精神」を礎とし100年続いて培われてきた有形無形のものです。具体的にどういうもの?ということを説明することは難しいのですが、そのヒントを今回のフォーラムでは示せたと感じます。

 特に、パネルならびにポスターセッションに参加してくださった在校生および卒業生が素晴らしかった!各々が樟蔭入学前の状況や心境に始まり、在学中での取組み、そして卒業生は現在の取組みなどを話してくれました。もちろん、これまでに多くの悩みや葛藤があったと思います。でもそれらを克服するため、いろいろと考え自分なりの答えを見つけ前向きに行動している様子に感動しました。また、こういう考えや行動を可能にする環境が樟蔭にある、と皆言っていたのもうれしく感じました。
 将来、悩み、苦労することもあろうかと思いますが、周りに惑わされるのではなく自分の楽しいことをする、失敗してもその失敗から学べば良いという姿勢があるので、どんな困難も打ち克ってくれるはずです。今後、エールを送り続けたいと思います。

 本学の客員教授の白井文先生には「私らしく、美しく」というテーマで、特別講演をお願いしました。ご自身のプロフィール、これまでの歩みを赤裸々?に語っていただき、「人の縁」を大切にし「人の扉」から成長をしていく、若い人たちに生きる上での考え方のヒントや他者との関わりの大切さを示していただきました。
 また、SDGs(持続可能な"開発"目標⇒白井先生曰く"発展"目標)を分かりやすく説明していただき、どのゴールも「女性の課題」であると示されました。こういう現状を理解した上で、様々な取組みがされていることを認識させられました。
 そして、「私らしく、美しく」というのは、実は樟蔭ではこれまでの先人達が具現化しているのですよ、ということで、「えをとめ ものかたり」注)から田辺聖子さんをはじめ樟蔭の卒業生、関係者の紹介をしていただきました。まさしくこれが樟蔭の紡いできた「歴史と伝統」なのだと思います。


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 冒頭、私が開会の挨拶を兼ねて基調講演をさせていただきました。そこでは、これからは人生100年時代、人生モデルがこれまでとは違いマルチステージとなる、そしてAI(人工知能)、ビックデータやロボテックス等先端技術が高度化して、あらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが大きく変化する時代が来ると予想されていることにまず触れました。シンギュラリティという言葉も示しましたが、こういう時代になるからこそ、これまで樟蔭で培った教育、特に無意識に100年紡ぎ続いている「美」の感性・価値観が必要となってくるのでは、と話しました。現在、大学ではグランドデザイン「美 Beautiful 2030~美を通して社会に貢献する~」のスローガンのもと、6つのビジョンを掲げ具体的な施策を展開しています。また樟蔭学園全体でもブランドコア「樟蔭美」の検討を進めています。

 グランドデザインの6つのビジョン実現は何も難しいことではないと思っています。今回のフォーラムのパネルならびにポスターセッションに登場した在校生や卒業生は現在の「えをとめ」です。胸を張って前向きに行動していると言える学生は確かに少ないかもしれませんが、生き生きとキャンパスライフを送っている学生が少なからずいるのです。そういう学生を一人でも多く育て、卒業後、色々な場面で社会の要として活動、活躍できるよう、サポートをしていきたいと思います。現在の「えをとめ」を育てるのが、大阪樟蔭女子大学の使命だと考えています。こういう環境づくりを行うには、様々な「学び」を充実させる必要があります。そのためにグランドデザインの6つのビジョンの具体化を進めていかねばなりません。
 今回のフォーラムを通して、在校生や卒業生からパワーを頂戴しました。そのパワーを活かしていきます。小さなところから周りに働きかけ、少しずつ大きな波、うねりにしていきます。

これからの樟蔭の学びに皆さんもエールを送ってください。

注)「えをとめ」:日本神話の「国生み」に登場する伊邪那美(いざなみ)のこと。美しい女性を表わした最初の言葉。

北尾 悟

未来のヒトの姿

 7月のヤフーニュースに未来(2100年)のヒトの姿が3Dイメージとともに公開されました。

 現代社会においてスマートフォン(スマホ)やパソコン(PC)の操作時間が増えることに対して懸念する記事、コメントを目にすることがあります。周りを見渡しても、長時間に渡りPCの前に座り、普段から常にスマホを肌身離さずにいる人が多いのが現状です。
 そういう生活を続けていけば、今回提示の3Dイメージは何となく現実味を覚える気がします。PCやスマホを使い続けた結果、全体的に不自然な前屈みの姿勢になると予想しています。人間の身体はある一定の姿勢を保とうとすると、その際に生じるダメージをどこか違う部分で補おうとします。前屈みの姿勢を維持しバランスを保とうとした結果、首の筋肉に負担をかけることになり、やがて筋肉疲労を起こし痛みを生じるようになるそうです。
 また、手も絶えずスマホを握っているためか内側に固定され、肘も直角に曲がったままになる姿が示されています。スマホの持ち方は"直角の肘"、いわゆる肘部管症候群を引き起こす、と指摘する専門家もいます。指がチクチクし、しびれ感や痛み、そして脱力感を覚えるようになるそうです。
 さらに、議論が分かれるところではありますが、スマホから放射される電波が、癌の発症、記憶力低下、あるいは無線周波数から脳脱を守るために頭蓋骨が肥厚するという指摘もあります。また、座りがちな生活習慣が脳の働きを低下させ、その結果、脳が縮小するということも言われています。
 これら様々な条件などを基にして今回提示された3Dイメージがつくられたことになります。これらの条件はすべて裏付けのある科学的なデータに基づいているものではありませんし、いろいろと違う説もあるようです。不安がる気持ちを持つ人もいるでしょうが、現在の人間社会に対する警鐘と捉えておけば良いと思います。

 生物の進化はゆっくりで、単細胞から多細胞生物に至るまでは約25億年、魚類・爬虫類から哺乳類までは十数億年かかっています。その後、数億年を経て哺乳類から人類へ変化しました。2100年までたかだか80年で、現在の姿から今回提示の3Dイメージのような変貌を遂げるとは考えにくいと思います。また、スマホなど情報端末の姿も今後変わることも予想され、新たな端末による身体への影響も考えねばならなくなるかもしれません。どのような社会、どのような人間の姿になっているのか、正直予想しづらいと思われます。

 物質的な観点から生物の進化を捉えると、遺伝子、つまりDNA構造と発現様式(どのように遺伝子が働くのか)の変化を意味しています。哺乳類の中でもサルからヒトへの変化(進化と言えるか最近疑問に思っているので変化とします)には、もちろん遺伝子の変化が事実としてありますが、それ以上にヒトとして他の哺乳類と大きく違う途を歩み、表向き地球を支配しているゆえんは、「言葉」を持ったからだと考えられます。ヒトは絶えず成長したいという願望が強い生物だと言われています。その願望を満たすためには話すこと、そして聞くことのコミュニケーションが欠かせません。話さない、聞かないではヒトは成長しません。
 このコミュニケーション能力を高めるには脳の活性化が必須です。活性化するには脳に多くの血液を流すことが求められます。話したり、聞いたり、見たりするヒトの動作には脳の働きが重要であり、そのためには栄養素や生理活性物質を含む血液の流れが必要とされます。血液の流れを良くするには、心臓ポンプの強化はもちろんのこと、最近注目されている足のふくらはぎも大事だと言われています。足のふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれています。20190425hanamizuki.jpg

 この原稿を仕上げるのにPCの前で前屈みになっているご主人をわが愛犬は心配げに見上げています。PC操作で前屈みになり凝り固まった脳の働きを低下させないように、その肉球でふくらはぎを踏んでマッサージしてくれないかなあ・・・・

北尾 悟

謙虚な気持ちが多様性の寛容につながる

 平成から令和の時代となり早3ヶ月以上過ぎました。新しい時代の息吹を感じ、皆さんが生き生きと前向きに行動できる世の中にしたいものです。

 昨年、訪日外国人数は3,000万人を超えました。特に、関西の伸びが顕著です。6月には大阪でG20が開催され、2025年の万博に向けて国際都市の印象が深まったと思われます。また外国人に限らず、異なる考え方、価値観や感性をもつ人たちが増えてきています。これまでの画一的な見方、捉え方と違う面を大事にする社会となってきました。 Sexual Orientation Gender Identity (SOGI)もその一例です。これからの社会、将来において、多様性がキーワードになると多くの人が言っています。そのような社会に対応するには、自分自身が持っているものとは違う異質を受け入れる「受容力」が重要になってくるのではないでしょうか?

 今後、自分とは違う考え方をする人々と仕事をしていくことが増えてくるでしょう。異質な人々が同じ職場にいる状況で生産的な仕事をしていくには、まず相手のことを知る努力が必要です。それまで個人々々が生きてきた背景が違うので、考え方が違うのは当たり前だと思うことが自然だと思います。そういう気持ちがなければ相手に対して配慮が足りなくなります。自分本位になり他人のことは文字通り他人事になるでしょう。場合によっては喧嘩にまで発展してしまう恐れもあります。

 喧嘩にまでとはちょっと飛躍しすぎかもしれませんが、このような状況にならないためには、異質を感じ取る「感受力」が求められます。自分と違う立場の人と真摯に向き合い、相手を「感じ取ろう」とする態度やそれを引き出す会話が必要です。これが多様性に満ちた世の中を生き抜くポイントだと思いますし、結果として人間関係を良くしていくことに繋がります。真摯に向き合うには、まず自分と相手は違うということを改めて認識し、相手をリスペクトすることが必要だと思います。これまで学長室だよりで記しましたが、どんな人でも必ず自分より優れていることがあるので、それを見つけリスペクトして対話することが望まれると思います。

 ただ自分が相手を知ろうと向き合っても、相手が自分のことを理解してもらえないこともあるでしょう。このような場合、相手の能力の問題、つまり相手が悪いのではなく、自分自身の態度や説明が不十分なのでは、という謙虚な姿勢が大事になるではないでしょうか。新渡戸稲造の言葉に「人を愛して愛の反響なきは己の愛の足らぬを証拠と知るべし」があります。他人のせいにするのではなく、まずは自分自身に問題がないのか、自分自身に問うことが求められるということです。

 先日、東京のある学園の理事長、学長を兼ねてらっしゃる方と懇親の場で話す機会がありました。その中で組織のリーダー、フォロワーを問わず一緒に仕事をしたい人とはどういう人かという話になりました。その理事長曰く「自分と異なる意見を持つ人を受け入れる人」「学び続ける人」「周囲の人を大切にする人」の3つを挙げられました。今まで以上に多様性に対応せねばならない世の中になります。その中で仕事を含めて生活していくには、このような心持ちを持っていくことが大切だと感じた次第です。

20190819aiken.jpg 謙虚な気持ちで自問自答しながら周囲の人々と生活をしていく。そう、うちの愛犬は散歩に行きたくてはやる気持ちを抑え、身体が硬い主人がストレッチを終えるまで玄関でじっと待っています。相手を受け入れ、ちゃんと学び、そして周囲の人を大切にしています。

 うーん、それに比べて私は・・・・

北尾 悟

田辺聖子さんを偲ぶ

 6月6日(木)に田辺聖子さんが亡くなられたというニュースが、10日(月)の昼過ぎに飛び込んできました。本学の前身である樟蔭女子専門学校の国文科の卒業生であり、皆さんご存知のように、芥川賞作家であり数々の作品を世に送り出した偉大な方です。男女の機微を独特の感性で表した恋愛小説やユーモアにあふれるエッセーで人気を集めました。芥川賞以外にも多くの文学賞を受賞され、2008年には文化勲章を受章されました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 田辺聖子さんにはこれまで大阪樟蔭女子大学に多大なるご理解とご協力をいただいています。中でも、樟蔭学園の創立90周年を記念して大学図書館内に「田辺聖子文学館」を2007年に開設した際には、400冊以上の著書やコレクションを送られ、書斎の再現コーナーも設けることにも積極的に関わっていただきました。現在、7月8日までの期間、「ミニ企画展『田辺聖子の樟蔭時代』」を開催しています。多くの方に足を運んでいただければと思います。
 2008年には青少年の読書・文化活動の発展・向上に寄与することを目的に「田辺聖子文学館ジュニア文学賞」が始まり、中学生・高校生の応募総数も延べ18万を超える文学賞へと発展しています。今年度も第12回目の文学賞への応募が始まっています。数多くの若くてみずみずしい感性豊かな作品が集まることを期待しています。

 実は、9日(日)に私は駅前の書店で田辺聖子さんの「私の大阪八景」(2018年度大阪ほんま本大賞特別賞受賞作)を買って読んでいました。この作品は、昭和初期から戦時中を経て戦後の頃までの大阪市内北部を舞台に、たくましく育っていく少女の物語です。フィクションの形をしていますが、田辺聖子さんの自伝といっていいでしょう。その中で「その三 神々のしっぽ〈馬場町・教育塔〉」には、友人と(樟蔭女子)専門学校に願書をもっていった、という記載があります。また「その四 われら御楯〈鶴橋の闇市〉」では、戦時中の樟蔭での学生生活(ほとんど軍需工場で働くことを余儀なくされた)や大阪大空襲の際には樟蔭から歩いて福島の実家である写真館までたどりついた様子や実家が跡形もなく戦火に消えたことも記されています。
 あの戦中戦後の時代を少女の目線で市中の人々の営みも交えて表されており、田辺聖子さんの他の作品とは一風違った感じがします。昭和49年に初版が発行され昨年改版再版されていることも併せて、興味深い作品だと思います。

 この本の解説は、交流が深かった小松左京氏(先に鬼籍に入られましたが)が書かれています。その中で田辺聖子さんの作品に引き付けられた理由として「文章の何とも言えない明るさと、ヒロインのかわいらしさ」と記しています。月並みだけど「文は人なり」とも。書く人の人柄や姿勢というものが文章に遺憾なくあらわされているとのこと。
 改めて、田辺聖子さんのご冥福をお祈りいたします。天国で「かもかのおっちゃん」達と賑やかにお酒とお喋りを楽しんでください。

北尾 悟

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