主に医療・教育現場で心理療法や心理アセスメントを行ってきました。特に語り・ナラティヴへの関心があり、病いや喪失、危機に伴うこころの揺らぎにまなざしを向け、「わたし」という自己の在りようを探究するとともに、心理臨床実践との接点を模索しながら研究を行っています。
皆さん、ご無沙汰です!
今回のとっても久々の突撃インタビューは、
2022年度から新たに
大阪樟蔭女子大学大学院臨床心理学専攻に着任された、
野田実希先生に、色々聞いちゃいます!
野田先生、よろしくお願いします。
よろしくお願いします!
今日はちょっとインタビュー前に下調べしてきたんです~。
野田先生は、以前は心理学以外の研究や仕事をされていた、
と聞いたんですけど、ホントですか?
ええ、元々大学では英文学を研究していました。
その後、社会人として働いた後に、
臨床心理学の世界に飛び込んだんですよ。
そうなんですか!英文学って異色。
でも社会人をやっていて、また別の世界に、
しかも大学に戻って勉強しなおすのは、
不安じゃなかったですか?
そうですね…。
でも、新しい世界が開かれるワクワク感も、すごくありました。
そもそも、人生には何が正解で不正解か
分からないという曖昧さがありますよね。
あります、あります。今朝だって私、
朝食のキャベツパンを5個にしておくべきか
6個食べるか、どっちが正解か、めっちゃ迷いました!
メイ・レイちゃんは、今日も食欲旺盛ですね。
そうやって曖昧で正解が分からない中で、
時に立ち止まり、悩み、苦しむことがあると思います。
でも、その一つひとつに意味を見出して、
自分自身のストーリー(物語)にしていくことで、
また新たな道が開かれていくんじゃないかな、
と思っています。
わわ、いきなり本題に入るようなお話ですね。
「悩み・苦しみも自分自身のストーリーにする」かあ。
それって、SNSで公開するとか、小説にするとかですか?
いえいえ、必ずしもそのような形にしなくても、
例えばカウンセリングの中で自分のことを語ることだって、
ストーリー(物語)にしている、と言えますよね。
んんん、なるほど。確かに、物語ってるし。
じゃあ、野田先生はカウンセラーとして働く中で
そういう考えを身につけたんですか?
そういった面もありますけれど、
それが私の研究テーマのひとつ
ということでもあります。
わー、ぜひ先生の研究テーマについて
聞かせてください。
いいですよ。まず研究では、
私自身が社会人として働いた経験から、
働く人のメンタルヘルスや
病休の体験について関心をもっています。
仕事をしていて、心のバランスが崩れたりして、
会社に行けなくなる、お休みする、とかですか?
そういう人、仕事がキツイんだろうなあ。
会社のしゃちょーさんとかぶちょーさんが、
もっと考えてあげればいいのに。
確かに、働く環境の問題もありますね。
ただ、私の研究では、当事者の方の視点を大切にしたい、
という思いがあります。
ですから、その方の語りに着目して、
インタビュー調査を行うことにしたんです。
一人一人の語りを大事に?
じっくり聴いて?
はい、じっくりです。そうするなかで、語りの多層性や多声性に出会い、
「何が語られるか」だけでなく、「どのように語られるか」
といった、語り・ナラティヴへの関心が高まりました。
そこで今は、語りを聴くための方法論の研究も進めています。
ちょっとちょっと、突撃インタビューを
やっている身としては、興味津々のお話ですよ~。
ナラティヴって、なんか聞いたことあるし。
しかも、「語りを聞くための方法論」って、
カウンセリングとかとめちゃくちゃ関係しそう。
はい。そうした研究は質的研究と呼ばれるものですけれど、
質的研究で生成された知が心理臨床の実践知と
どのように交わるか、その接点の探究も行っています。
研究と実践をつなぐ、ってことですね。
そうすると、働く人たちのメンタルヘルスが
主な研究対象なんですか。
その他にもやっている研究はありますよ。
例えば、糖尿病やHIV等、病いを抱えて生きる方の
体験理解や心理的支援に関わる効果研究、
あとは夢研究も行っています。
やっぱり、多彩ですね~。
臨床心理学専攻の先生たちは、
大概いろんな研究しているもんなあ。
では、今まで働いてきたり、
今働いてたりしている臨床現場がどんなところか
教えてください。
今は中学校・高等学校や大学相談室、
オフィス等で臨床実践を行っていますが、
これまで、医療現場・教育現場を中心に
心理臨床を行ってきました。
教育現場では、小学校~大学と幅広く、
生徒さん・保護者さんとお会いし、
カウンセリングを行ってきました。
特に、高等学校や大学では、
留学生や海外経験のある方に対して、
青年期の課題だけでなく、
異文化適応の側面からも支援を行い、
時に英語でカウンセリングを行うこともありました。
英語で?カッチョイイ!!
そっか、元々英文学の研究者だし。
他には医療現場、主に精神科クリニックで
心理検査や心理療法を中心に、
臨床活動を行っていましたよ。
じゃあ最後の質問です!
野田先生が担当している大学院の授業で、
心掛けていることとか、大事にしていることって
どんなことですか?
今担当している「臨床心理基礎実習」では、
実感を通して主体的に考えてもらうこと、
そして様々な視点に開かれてもらうことを
大切にしています。
心理臨床は、「人が生きる」ことに関わる学問ですから、
初めにお話ししたように、
ただ一つの正解や不正解といったものはなく、
さまざまな可能性に満ちたものであると同時に、
その道筋も常に変化しうるものと考えています。
そのため、まずは自分自身の生き生きとした
実感や経験を大切にして、そこから考え抜くこと、
そしてさまざまな可能性を考えて
問い直す姿勢をもってもらうよう、
コメントを伝える際も心がけています。
ふ~ん…「実感や経験を大切にして、考え抜くこと」、
「さまざまな可能性を考えて、問い直す姿勢を持つこと」…。
私の場合、あおむしから知性的な蝶になって羽ばたくには、
朝からめっちゃ食べないといけないんだけど、
サナギになるのは怖いし、
そもそも羽化したら、樟蔭臨床心理学専攻の
イメージキャラクターも辞めなきゃいけないんだよな~、
きっと。
毎朝キャベツパンをどんだけ食べるかは
実は私がどう生きていくかにも関わる切実な問題で…
ってお話しを、野田先生に、今ものすごく語りたいです。
そんな語りも、私のストーリーになりますか?
今日はもう時間ですけど、
また研究室を訪問してもいいですか?
もちろん、いつでもお待ちしています。
「生きる」ことの奥深さを含めて、
臨床心理学、心理臨床について、
みなさんといろいろお話できたら
と思っていますから。
ありがとうございます!
語りを聴くことの研究者で実践家だもんなあ。
私、野田先生に弟子入りしよっかな~。
野田先生のお話からは、野田先生ご自身の体験と実践に裏打ちされた研究への関心や、それぞれの人が自分の人生を悩みながら考えて生きていくことを大切にする臨床の眼差しがあるなあ、ということを強く感じました。そして、突撃インタビューが終わってから、野田先生が「心理臨床」という言葉を何度も使っていたことに気づきました。「心の臨床」であることを常に考えているようなその姿勢を、皆さんも樟蔭で学び、実感して、
研究や実践へとつなげてみませんか!