大阪樟蔭女子大学

 

  大阪樟蔭女子大学人間科学部・短期大学部は、「人間を主人公にして、あらためて現代を問い直す」ことを目的に、2001年4月関屋キャンパスに開設されま した。私達は、学生とともに考え・行動する活気ある大学を、また研究・教育成果を学外に積極的に開示することにより「地域と対話できる」大学を目指し、日 々努めております。

加えて本学部応用社会学科では、社会学をベースにファッション、マーケティング、市場システム、消費者行動などをテーマにカリキュラムを構成しており、企 業あるいは各種団体などにおいて社会学的知識を元に、現代社会における諸問題の解決能力を持ち、社会調査等を応用しならがら、積極的に政策立案等に携わる ことのできる人材の養成を目指しております。

かってロラン・バルトは「ファッションは《わたしはだれ?》という問いと戯れている」と表現したように、価値観が多様化し混迷を深める現代社会において、 ファッションは自己を見直し、社会を見直す重要なキーワードになっているように思います。まさにファッションこそは、上記本学部開学の趣旨を実現するため の、コア・テーマのひとつと言っても過言ではないと考えています。

世界のファッション市場でながく第一人者としての地位を堅持なさっている、かつ社会的貢献活動にも積極的なエルメス社のファッション観、その企業戦略等に ついて、現場を指揮統括なさる立場からお話していただくことは、本学学生に対してのみならず、「地域と対話できる」大学を目指す本学部にとっても、極めて 有意義な情報発信の場を提供することになると確信しております。
大阪樟蔭女子大学人間科学部学術研究会 委員長 川瀬豊子



本 来、日本の固有の文化は、物の豊かさを求めるのではなく、心の豊かさを追求する事にあったようです。茶道などはその典型であります。優れた職人が丹精こめ て作った「本物」の一品を求め、手に入れて使いこなす。いわゆる『一生もの』との出会いが大切で、その中にそれぞれの思い出を刻み込んでいくのです。日本 人は、いつのまにかその心をどこかに置き忘れてきたのではないでしょうか。
物の価値は、使い方、接し方によって決まってきます。作り手は『夢』、『感動』、『驚き』を使い手の方に体験していただくのが願いです。「物」は、使って 生活を豊かにし、居心地の良いもの、そして美しいものでなければなりません。自分にとっての美しさとは何か。物もありすぎると、美しい物も隠れてしまいま す。自分らしさを自分自身で創り出し、良いものを見抜いて長く使うことを願っています。


ファッ ションや音楽などにみられる流行は文化の一側面であり、それらを通して社会の特質がみえてきます。社会学の研究対象としての流行は「目新しいこと」「一時 的なものであること」「多数の人に支持されていること」の3つの特性によって定義することができますが、最近では、これらの定義にあてはまらない流行のパ ターンが現れています。
その定義にあてはまらない流行のパターンの一つに、熟練した「職人」による「一生もの」の本物の商品を作っている「エルメス」があります。この「エルメ ス」の「ものづくり」の考えは、人間科学部の「人づくり」のコンセプトに相通ずるものがあり、樟蔭の伝統に加えて関屋キャンパスならではの「人づくり」に 励みたいものです。

エルメスは、1837年にパリで馬具製造業として創業した。
貴族や上流階級の人々を顧客とし、その腕の良さで名声を得たエルメスは、馬車から自動車へ、という時代の流れの中で、馬具から旅行用のアイテムを作るブラ ンドとして発展した。エルメスの顧客である貴族や上流階級の人々は、時代の流れのトレンドをまず最初に感じ取り、新しいことにどんどん挑戦していく。こう したニーズに答えて、エルメスは革新的なことをその都度おこない、その時代時代に受け入れられてきた。 現在では14のアイテムを扱うブランドとなっている。
エ ルメスの基本は職人、物作りである。通常のブランドビジネスでは、まずロゴありきであるが、エルメスではまず職人ありきである。職人が自分自身納得しなけ れば、その作品は世には出さないというのがエルメスの物作りの基本である。さらに職人が昔の伝統の技術を守ろうとすると、どうしても保守的になりがちであ るが、エルメスでは、職人を世界各地に送り、新しい体験を通して伝統的でありながら、革新的な物作りを可能としている。またエルメスのもう一つの特徴は、 家族が中心となった企業であるという点であり、家業を次世代に送り届ける、という長期的なビジョンがある。こうしたことからエルメスはライフスタイルその ものに関与しているブランドであると言える。


  物を見極める目を持って、自分の目でその物を確かめて本当に良い物を選んで欲しい。本物とは本当に価値のある物であり、物の価値は使われて初めて出てくる ものである。使っていく中で自分の思い出がその物に刻み込まれて、新品よりも価値のあるものになっていく。そういう良い物を良いと理解し、夢や感動、驚き を体験してもらいたい。本来日本人はそうした文化をもっていたはずであるが、近代化に伴う物量としての豊かさが幅をきかせている。我々が本当の豊かな生 活、美しい生活を送ることによって本当に人間的な美しい日本がもう一回戻るのではないか。
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