心理療法や心理アセスメントを受ける中で、人の心には多様なイメージが動き、様々な感覚や感情・体験が生じます。そのようなイメージの次元から人間を理解し、研究や心理臨床の実践に繋げていきたいと考えています。
…
…あっ
もう始まってました?
ゴメンなさい
樟蔭の臨床心理学専攻の先生方を紹介するコーナー
第5回目は、奥田 亮先生です。よろしくお願いします!
こんにちは。よろしくお願いします。
どうしたの、メイ・レイさん?ボーッとして、何か考え事ですか?
な、なんでもないです!
え~と、何から質問しようかな…。
じゃあ、奥田先生は、どういった現場で働いてきたか、
教えてください。
昔は、不登校児童・生徒の適応指導教室や、
大学の学生相談室などで、相談活動をしていました。
今は、京都の診療所で心理療法面接や心理検査を担当しています。
本学附属のカウンセリングセンターの相談員でもありますよ。
じゃあ、そういう仕事をしようと思ったのは、なぜですか。
奥田先生は、なぜ臨床心理学を学ぼうと思ったのですか?
おっと、いつもと質問パターンを変えてきましたね。
話すと長くなるだろうから、ひとことで言うと、
「人」に一番関心があったから、ですかね。
「人」に関心?
昔から、自分にとって嬉しいことや楽しいことも、
しんどかったり悩ましいことも、
たいてい、自分を含めた「人」に関係していることが多くて、
それについて考えたり、取り組んだりしていきたい、
というのが、将来何をするかを選ぶ根底にあったと思います。
嬉しいことも、悩ましいことも、「人」と関わること、か…。
自分にとって大切なことは、喜びにもなるし、悩みにもなるよね。
それって、奥田先生が翻訳した、
「ユングのタイプ論」って本とも、関係しているんですか?
お~、その本のこと、よく知っていますね。
そ、そりゃあ、私もインタビューするの、6回目ですから!
ちょっとぐらい、下準備するようになってきたんですよ~。
(ホントは、たまたまチラッと本棚で見つけただけ、
なんだけど…。)
なるほど。
確かに、ユングのタイプ論は、自分のパーソナリティ、
特に心のエネルギーがどんな風に使われていて、
どういう風に心を働かせるのが得意なのか、苦手なのか、
について考えられる理論ですね。
肯定面も否定面の両方ひっくるめて、
「人」というものを考える、という意味では、
繋がっているかもしれませんね。
今も「タイプ論」を研究しているのですか?
関連する研究は、していなくはないけど、どちらかというと、
今は主に「バウムテスト」という描画法について研究しています。
知ってる!木を描くやつでしょ?
そうです。
それで、性格とか心理が分かるんですか?
ん~、そうだな~…
私は、人の心の中で生まれてくる「イメージ」を
大切にしたいと思っています。
??(何の話?)
例えば、メイ・レイさんがインタビューで先生に話を聞くと、
「あ~、こんな感じかな~」ってイメージが沸くでしょう?
あるいは、インタビューをする前から、どんな話になるかと色々想像したり、
インタビューが終わってから後で「もっと××しとけばよかったな~」とか
考えたりしますよね?それも一種のイメージです。
あるある。一人反省会、めっちゃしますもん。
でも、どんなことに対して、
どんな風に心の中でイメージを起こすかには、
その人の個性が表れている、と思います。
だから、そのイメージの現れ方を丁寧に考えれば、
その人らしさが理解できると思う。
私は、バウムテストで、そんな風にして
描かれた木を捉えよう、理解しようと思っています。
…何か、分かるような、分からんような話だわ。
生まれてくる「イメージ」を、しっかり見つめる、ってこと?
まあ、そうですね(ニコニコ)。
…何ですか?なんで私を見つめるの?
照れるわ~。何なんですか、もう~!。
じゃあ、授業では、心理検査とかを教えているんですか?
それも担当しますけど、ずっと担当しているのは
「臨床心理基礎実習」ですね。M1の実習を担当しています。
M1って、修士1年生ですよね。
それは、どんな授業ですか?
心理臨床面接の基礎的な態度や技術について、学びます。
まずは事例検討会に参加して、様々な心理面接の事例に触れます。
同時に、面接の動画を視聴したり文献を読んだり、ロールプレイを行ったりして、
心理療法面接の知識と技術を身につけていきます。
プレイセラピーの訓練も行いますし、様々な外部機関への見学も行きますよ。
一番はじめの、実際的な臨床の訓練の部分を担当されるんですね。
じゃあ、最初は奥田先生の下で、臨床を学ぶってこと?
いやいや、私だけでなくて、複数の教員で担当しますよ。
何人かの先生がいることで、様々な考え方を知ることができます。
そっか。色んな考え方がありますもんね。
授業の中で、奥田先生が大切にしてることって、
ありますか?
その人らしさ、かな。
その人らしさ?
これは、カウンセリングや心理療法で
クライエントの方たちに出会う時にも、大切に思っていることです。
色々な悩みやしんどいことを抱えている方たち、
あるいは大学院生や大学の学生さんたちに関わる時にも、
それぞれの人たちなりに学んだり、人生を進んでいこうとする中に、
その人らしさがあって、
まずはそれを大切に受け止めていきたいです。
その人がしている体験を、自分の中でイメージして寄り添いながら、
その人が、より伸びやかに咲けるといいなあ、と思っています。
あ…、さっきお話していた、バウムテストの木の眺めかたが、
何となく分かった気がします。
一つ、私のことなんですけど、聞いていいですか?
どうぞ。
「その人らしさ」を大切にする、って話ですけど、
わたしの「私らしさ」って、何ですか?
メイ・レイさんの「私らしさ」?
はい。
何か最近、ずっと考えてて、
私って何なんだろうって。
ショウインのリンショウシンリガクセンコウの
イメージキャラクターとして、
成長しよう、頑張ろうって、思うんだけど、
何か空回りしてる気がするし、
結局ずっとアオムシのまんまで、
いつまでたっても、蝶になれないじゃないですか!
おー、えらいまた、本質的な問いを発しますね。
今日、色々考え込んでいたのは、それでかな?
そうですね…。心の中の「イメージ」は、
そのイメージ自体に自律性や展開していく可能性が含まれているものです。
…はい。
だから、メイ・レイさんが、ちゃんと耳を澄ませて
自分のイメージを味わえば、きっとそのイメージが動き出します。
…私がしっかり自分自身に耳を澄ませて、それを聴きとっていれば、
私は変わるかも知れないですか?
そうやっていれば、わたしは私として、いつか殻を破れるのかな。
そうね。
もう半分、破ってる気もしますけど。
…ん。見えてきた、気がする。
そう思ったら、おなかが減ってきたぞ。
奥田先生、今日はありがとうございました!
先生も、私を見守ってくださいね!
専攻の大事なマスコットキャラクターですからね、
約束しますよ。
今回のキーワードは、「イメージ」と「その人らしさ」でした。
私の相談もしちゃったけど、奥田先生は、とても真剣に考えて
答えてくださいました。
私の中にある「私らしさ」を、しっかりと眼差してくれていた
気がします。
その人の個性を大切にして、一緒に考えてくれる先生がいる、それが樟蔭です!