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樟蔭レポート

『蝉しぐれ』といえば藤沢周平さんの長編時代小説のタイトル。ぜひ読んでいただきたい名作です。初出は1986年の山形新聞夕刊ということですが、私がこの作品を知ったのは、もっとずっと後のこと。映画化されたおりの「20年、人を想いつづけたことはありますか」というキャッチフレーズに惹かれて手にしました。後にNHKがテレビドラマ化しましたので、そちらでご存じの方もいらっしゃることでしょう。原作には原作の、映画には映画の、そしてドラマにはドラマの良さがあります。作品に主人公、文四郎の成長を見る人、少年達の友情に心を熱くする人、幼友達ふくとの恋愛小説ととらえる人もいるでしょう。とりわけ私が感じるのは過ぎ去った青春へのノスタルジーというところでしょうか。

 

製作者による視点の違いを考えるのも楽しいものです。また、映像で描かれるときの風景描写やカメラワーク、役者さんの演技からもそれぞれの作品観がうかがえます。効果音や音楽もその作品を構成する重要な要素です。文四郎が、父の遺骸を大八車に載せ峠を越えてゆきます。照りつける夏の日差し、一人では急坂を登りきれません。幾度となく後ずさりします。辺りに響き渡る蝉しぐれ。物語前半の場面ですが、私の大好きな場面です。

 

ところで『アリとキリギリス』といえばイソップ童話。成立は紀元前のギリシア。奴隷であったアイソーポス(イソップ)が語った寓話の一つ。日本には16世紀末にイエズス会宣教師によって伝えられ『伊曾保物語』として広まりました。夏の間働き続けるアリと歌い、遊び続けるキリギリスを描いた話ですが、元は『セミとアリ』だったそうです。セミは地中海沿岸には生息しているのですが、ヨーロッパ北部ではあまり見かけないため、キリギリスになったということです。日本にはこちらが伝わりました。

 

連日の蝉の大合唱を聞きながら、「素数ゼミ」に思いを思い浮かべる者もあれば、文学作品に心を寄せる者もあります。中には暗くなってから羽化を見に行きたいと考える人もきっといることでしょう。「学ぶ」とはこういうことではないでしょうか。ある事象に出会ったとき、何も考えることなくただ看過するのか、それとも何かを感じ、何かを想い、新たな興味を涌かせるのか、机の前の学習だけが勉強ではありません。夏休みです。6年一貫コースは夏期授業がありますが、普段よりずっと時間の余裕を手にすることができる期間です。日頃の学習の補充も大切ですが、この季節にしかできないことにぜひチャレンジして欲しいと思います。私ですか?したいことがいっぱいあります。岩ならぬアスファルトにしみ入る蝉の声を聴きながら考えていました。

 

6年一貫コース担当 中学教頭 松尾隆之

 

20130722_0 八経ヶ岳にて

 

20130722_1 八経ヶ岳にて