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樟蔭レポート
「それは、モクレンの花か咲き始め、東大入試で、薫は浪人する決意を固めた頃。由美はめでたく名門女子大学に合格し、二人は薫の自転車で町内を一周、モクレンのある斎藤さんの所を過ぎ、コデマリの生垣のあるお屋敷の藤椅子に、いつものお爺さんがいないのに気がついた。」先週、庄司薫『白鳥の歌なんか聞えない』(新潮文庫)を読み直してみました。
 キャンパス内の美しいモクレンを見、実家の庭のモクレンの香り、18歳のときに読んだこの作品を思い出しました。
 欧米では、ふだん鳴かない白鳥が、死ぬ直前に、美しい歌を唄うという伝説があります。これをSWAN SONGと呼びます。アメリカ文学ではよく使われる言葉です。その伝説から、音楽家などの最後の公演や作品を、SWAN SONGと表現します。また、長年成し遂げられなかった事を、死の直前に成功させる事もSWAN SONGと表現されます。
 この作品は軽妙な語り口が話題を呼んだ芥川賞受賞作の『赤頭巾ちゃん気をつけて』の続編で、作者と同名の主人公(庄司薫)の四部作の一編となります。
 四部作は、『赤頭巾ちゃん気をつけて』『白鳥の歌なんか聞えない』『さよなら怪傑黒頭巾』『ぼくの大好きな青髭』、物語の時の流れで言うと「赤」「白」「黒」「青」の順で、読むのがよいと思います。
『赤頭巾ちゃん気をつけて』は、日比谷高校3年生の〈ぼく〉が、進路や恋愛について悩む物語。幼馴染の由美の気持ちはつかめず、目指していた東大の入試は学生運動の影響で中止になり、いろいろなことを考えながら街をさまよう〈ぼく〉、高校を卒業したものの、まだ次の進路が決まっていない状態で、進路や恋愛の悩みもあるのですが、『白鳥の歌なんか聞こえない』の中で、真正面から向き合っている新たな問題は、人間の死について、〈ぼく〉と由美、その先輩の小沢さんとで、「白鳥の歌⦅SWAN SONG⦆」に耳をすます、そういう物語です。死について考えるということは、いかに生きるべきか考えることと表裏一体。
 さて、<僕>のSWAN SONGはどのような曲にしましょうか。振り返ればこの三年、生徒想いの先生方と、蒼い日々を直向きに生きる生徒たちに出会えて幸せでした。ありがとうございました。⦅令和3年3月26日  副校長 小林正樹⦆