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常日頃の意識が大事

2018年5月11日

180511.jpg 今年は季節の移り変わりが早い気がします。3月末には桜の花が散り始め、4月の半ばに街路を彩ったハナミズキもすっかりと新葉を身につけた姿と変わり、皐月5月に入る前には、山に目をやると藤の花が紫のペイントをところどころにすでに施している状況。

 この春新たにキャンパスに足を踏み入れた新入生も学生生活を順調に滑り出していることと思います。また在校生も学年が一つ上がり、勉学の内容も深みが増し、卒業年次生は卒業研究と就職活動に費やす時間が多くなってきたことでしょう。一人ひとりの学生が充実した日々を送ることを願ってやみません。

 ところで学生はキャンパスという囲いの中で守られている部分がありますが、社会の一員です。社会の一員ですので他者と関わりが生じる社会生活を営まねばなりません。当然、いろいろな人とお付き合いをしなければなりません。どうしても合わない人、苦手な人と一緒に共同作業をせざるを得ない場合もあるでしょう。共同作業でなくても、付き合いづらい人とのやり取りも必要なこともあるでしょう。以前、この学長だよりにも記しましたが、そういう場合に、できたらその人の良い面、自分よりも優れている面を探し認めるように努めていくことを提案しました。「どこかにこの人の良い面がある、良い面が必ずある」と念仏のように心の中で呟いてください、と。

 ただ正直に告白しますが、私自身、苦手な人がいますし、うまくコミュニケーションが取れずに悩むことも多々あります。この学長だよりでは、こうすれば良いですよと言っておきながら、実は悩んでいます。何とか表面上は平静を装っていますが、社会生活を気持ちよく送っているわけではありません。少しでも良くしようと心がけ、心の中で「どこかにこの人の良い面がある」と念仏を唱えているという状況です。

 最近、思っていることがあります。コミュニケーション能力を高めるには他者との会話などを円滑に進めていかねばなりませんが、この他者は当たり前のことですが、活字の通り、「他の者(人)」です。自分ではありません。忘れがちではありますが、会話などをしている他者、相手は、自分とはあらゆる点で違っているということです。これまでの人生における経験、考え方、価値観、知識の内容や量など、一つとして同じものはないのです。ですから、会話をして自分の意見や考えを相手に理解してもらうことは簡単なことではありません。想像以上に相当なエネルギーを費やさねば、自分自身が描いているように相手は話に乗ってくれないし、理解もしてくれないと思います。

 では、どのようにして想像以上に相当なエネルギーを費やして、うまく相手とコミュニケーションを取ることができるのでしょうか?「想像以上に相当なエネルギー」とちょっと大げさな表現をしましたが、常に意識、心がけをしないと忘れてしまいがちになるので、こう記しました。難しく考えずに、常に意識をしておくことがまず大事で、各々のできるところから実践すればよいかと思っています。

 考え方の一例として、これまでに示してきた「どこかにこの人の良い面がある」と念仏のように唱えることもあるかなと思います。心の中で唱えることにより相手を尊重することになるので、自分本位の考えを転回し相手の立場を認識することにつながるでしょう。そして会話の際に聞き手である相手の立場から自分がどう見えるのか、相手から自分はどう思われているのだろうか、こういう言い方を相手はどう捉えるだろうか?など思いめぐらすことにより、相手と気持ちよく会話が弾み、良好な間柄が築けるのではと思います。

 また相手に自分の考えを聞いてもらい何らかのフィードバックをもらおうと思ったら、やはり会話術を磨かねばならないでしょう。私自身、会話術を身につけていませんし不得手なことではあるのですが、最近、ちょっとだけ心がけていることが一つあります。それは、本題、ポイントを外さない、ずれないで話を進めるということです。得てして人は無意識のうちに(深層には意識しているかもしれないが)本題とは関係ないことを会話の途中で持ち出してしまいます。私もよくあります。相手によく思われたい、共感してもらいたいという願望があり、会話が本題からずれていき、結果として聞き手の注意力が散漫になり、こちらの思いが遂げられないことがしばしばあります。本題を理解してもらうのに役立つ情報であれば良いのですが、実はそういうケースはほとんどないという心理学者の研究結果もあるようです。会話の目的は、相手に自分の趣旨を理解してもらい、一緒に考えてもらいたいことですから、この目的達成に対して阻害することはできるだけ排除するよう心掛けたいものです。聞き手がこちらの話題に関心を持ってもらい、一緒に考えてくれるように努めるには、無関係な情報は取り除き、ポイントをずれずに示すことが大事だと思って、少しずつ実践しているところです。

 自分自身も大事ですが、相手のことも考えてみる。常日頃の意識が大事だと思います。いろいろな多様性を持つ相手を尊重する。お互いが認め合う「美学」を持ちあわせて初めて、ダイバーシティーの世の中が現実のものになるのではないでしょうか?

北尾 悟

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