令和2(2020)年度 入学式式辞
2020年3月30日
本日晴れて大阪樟蔭女子大学大学院ならびに大阪樟蔭女子大学に入学された新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。桜の花が満開に向かう中、すべての教職員とともに、皆さまの入学を心から歓迎いたします。
そして、皆さまを今日まで育て、勉学を支えてこられたご家族をはじめ関係の方々にも、心よりお慶びを申し上げます。
新入生の皆さまが入学された大阪樟蔭女子大学の運営母体である学校法人樟蔭学園は、1917年、大正6年に設立された樟蔭高等女学校がその歴史の始まりです。創立以来100年を超えた歩みを刻んでいます。また、大学も昨年、創立70周年という節目の年でした。次の時代に向けて皆さまと共に、これからの新しい樟蔭物語を作っていきたいと思います。
昨年11月に大学創立70周年記念フォーラムを開催しました。そのフォーラムのタイトルは、「今、なぜ『美』の感性・意識が求められるのか?~私の"樟蔭美"がこれからの時代を生きる軸になる~」でした。ここで示した"樟蔭美"とはどういうものなのでしょうか?
樟蔭学園では、創立者・森平蔵の思いである建学の精神、「高い知性と豊かな情操を兼ね備えた社会に貢献する女性の育成を目指す」が、100年経った今でも色褪せることなく受け継がれています。この間、10万人を超える卒業生を社会に輩出し、様々な分野で活躍されている方が多くおられます。時代が移りかわり、今後AIをはじめ先端技術が高度化し、社会のあり様が大きく変化しようとも、樟蔭で培ってきた精神は、これからも自信をもって評価されるべきものだろうと思います。
実際、記念フォーラムのパネルセッションでは、在学生、卒業生が参加し、自分の夢・目標をしっかりと表現してくれました。在学生は現在、興味があり取り組んでいること、樟蔭での学び、そして将来に向けた抱負について、自分軸を定め前向きな気持ちで学生生活を送っている様子を楽しそうに話してくれました。また卒業生は、樟蔭で学んだこと、人とのつながり、これらが現在の仕事にも繋がっていることを在学生へ伝えてくれました。皆、日常生活を送るうえでの判断基準、ものさしを持ち、考え方、価値観を身に付けていることを示してくれました。まさしくこれが"樟蔭美"であると実感しました。フォーラムでは"私たちの樟蔭美"というテーマに沿ったポスターセッションも行い、すべての学科の学生が、各々、様々な場面で活動している様子を発表してくれました。すごく頼もしく感じ、嬉しい気持ちになりました。
これからの世の中、皆さまが社会で活躍する次の時代は、今よりもっとよくなってほしいと願っています。先ほど述べたAIをはじめ多くの分野で科学技術が進展、高度化していき、生活はどんどん便利になっていくでしょう。
便利になることは良いことではありますが、その便利さに甘えてしまうと、身体は元より物事に対する考え方、感受性が退化してしまう恐れがあると私は思います。例えば、皆、携帯電話、スマートフォンを持っていますよね。いろいろな情報を瞬時に手に入れることができ、大変便利です。でもいつでもどこでもアクセスできるので、何か分からない時には安直に答えを求めようとしていませんか?深く物事を考えるよりも、直ぐに正解を求める風潮になってきているのでは、と危惧しています。深い考察なしに結果だけを求めると、もし何か問題が生じた場合に必要とされる解決能力が減退していくでしょう。今後、益々、価値観が多様化し正解のない問いがあふれる世の中になると予想する人もいます。となるとフォーラムに参加した在学生や卒業生のように、誰かの意見に流されず、自分らしい生き方の軸を持つ必要があります。
かの偉大なファッションデザイナー、ココ・シャネルはこう言っています。
「美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる」
大阪樟蔭女子大学は、2030年に向けたグランドデザインを提示しました。そのスローガンは、「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」です。ここでいう「美」とは単に外見上のものではなく、むしろ内面から醸し出される美しさであり、教養があり立ち居振る舞いに品がある洗練された「樟蔭美」を意図しています。フォーラムに参加した先輩たちのように自分軸を持ち、知性・情操・品性に裏打ちされた芯のある人に成長していくよう、これからの樟蔭での学生生活を送ってもらいたいと思います。皆さまが成長できるよう、私たち教職員一同、様々なプログラムを準備しサポートの充実を図っていきます。
コロナウイルス感染拡大の中、様々な情報が飛び交い、行動様式をはじめ「人間力」が問われています。これまで培ってきた樟蔭美をさらに磨きをかけ、新しい時代に即した教育展開を図っていく必要があると感じています。新入生の皆さまには、私たちの思いを受けとめ、対応してもらいと思います。そこで、外出や人の集まりが制限されることもあり、一つお願いしたいことがあります。
それは「読書」です。本を読むことによって自分が知らないことを吸収してください。文章を追うことにより、様々な人に出会い、様々な場所を旅し、様々な考えを知ることができます。知らない言葉や表現に触れ、コミュニケーション能力も身につくことにもなります。「読書」を通して、価値観や世界観が養われ、自分軸を作ることに繋がっていくと思います。
自分軸を作るということは、あなたらしくということです。
「美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる」
新入生の皆さまが、「読書」を通して自分軸の形づくりを開始し、通常生活に戻ったときに、樟蔭美、「美 Beautiful」な充実した学生生活を送ることを願って、私の式辞の結びといたします。
皆さま、ご入学、まことにおめでとうございます。
令和2年4月1日
大阪樟蔭女子大学 学長
北尾 悟