他者を感じるセンス~ウィズ コロナの時代に~
2020年10月14日
さて、新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んだ経済状況を回復させるため、政府は「Go To キャンペーン」を開始しました。観光・運輸業、イベント・エンターテイメント業、飲食業などに携わる人たちの困窮を少しでも緩和することが目的です。一定の効果は見込めると思いますが、様々な課題が現実問題として露呈してきました。それは不正受給行為です。
そもそもこのキャンペーンの財源は、2兆円弱の補正予算です。これは国債発行によってまかなうとされています。ある程度、人の流れを活性化して消費を促し、経済状況を上向きにするには、キャンペーンなどにより国民を鼓舞することは確かに必要です。感染リスクも伴い冷え切ったマインドの状態なので、号令だけではなくインセンティブを与えることも大事でしょう。ただ私利私欲に走り、自分だけ得をしようと考えるのはいかがなものでしょうか?こういう行為は、後々私たちの子孫に不必要な借金を負わせることになります。自分の行為が他の人たち、今、時を同じくして生きている人たちだけではなく、自分の子どもや孫の代など将来に渡り大きな負担を負わせることに気づいてもらいたいものです。
コロナ禍の状況下、「他者を感じるセンス」がより一層求められるのではないでしょうか?この半年、ノーマルではないアブノーマルな生活を強いられ、多くの人たちが大なり小なり心身に変調をきたしたと思います。こういうときは自分のことで精一杯だと思います。しかし、人は自分以外の人たちと交わって生きています。仕事でも趣味でも恋愛でも、他の人たちとまったく関わらずには人生を送ることはできません。他者と良好な関係を築くことが今以上に求められると思います。
以前、「他者をリスペクトするセンス」を養ってください、と伝えました。学生を含めた何人かの人から、「どうやって養ったらいいの?」「他の人をリスペクト、褒めることができない!」と質問や抗議?を受けました。私の拙文を読んでくれるだけでも嬉しいのですが、もっと気楽に向き合ってもらえればと思います。まずは他の人のことを思うことからでも構わないです。自分という人間以外の大勢の他者が存在してこの世の中が成り立っている、ということを意識するだけでも十分だと思います。
人間の感覚は大きく5つあると言われています。見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触る。すなわち、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感です。ここにもう1つ「他者を感じる感覚(センス)」を付け加えてみるのはいかがでしょうか?もちろん、この6つ目のセンスは既にある5つの感覚を介してもたらされるもので、学問的に同列に扱うことはできないことは重々承知しています。しかし将来どんなに科学技術が進展したとしても、いや進展すればするほど、「ヒト」として生きていくには、とても重要なセンスだと考えています。
6つ目のセンス、「第6感」という言葉があり、辞書によれば、五感を超えたものとされています。そう大げさに考えず「他者を感じるセンス」とは、人は大勢の人たちに囲まれて生きている、そういう大勢の人たちがいることを感じて生活する、それは過去も現在も未来も同じだ、ということ気持ちをもつことから始めてみてはいかがでしょうか。コロナ禍下、Go Toキャンペーンが正しく運用され、社会全体の景気が上向き、ほんとうに困窮している業者の方々に笑顔が戻ることを願ってやみません。
我が家の柴犬も常に第6感を養っています。後ろ向きの姿勢でも尻尾をセンサーにして周りの状況をサーチしています。
2020年10月14日
学長 北尾 悟