日常の中で感じられる素朴な感覚や面接空間等の非日常の中で感じられる「自分」という感覚を研究しています。また、言葉にならないこころの在り様が、夢や箱庭、遊びといったイメージとしてどのように表現されるかに着目し、心理臨床実践を行っています。
皆さん、お元気ですか?
久しぶりの突撃インタビューです。約2年ぶりってことで、
ちょっと緊張しちゃいますね。
今回は、2024年度から大阪樟蔭女子大学大学院臨床心理学専攻に着任された、
加藤奈奈子先生へのインタビューです。
加藤先生、ヨロシクお願いします!
こんにちは、よろしくお願いします。
メイ・レイさんにお会いできて光栄です。
このコーナーは、樟蔭に来る前に拝見してたんですよ。
えーっ、ホントですか?めっちゃ嬉しいです。
じゃあ遠慮なく、バンバン質問しちゃいますね。
はい、どんどんどうぞ!
では~、まずベタですけど、
先生のご専門や研究テーマについて教えて下さい。
研究テーマですか。
これまで様々な研究をしてきたのですが、
共通する問題意識としては、自己省察など、
「私」を見つめる視点ということがあります。
ジコショウサツ?
うーん、そうですね。
例えばデジャヴュ体験って分かります?
ハイハイ、「これって、前にもあったよな~」
ってなるやつですよね?
そうです、それって自分の過去と今の体験を
自分の中で照し合わせている過程がありますよね。
心理療法において記録を書くこともそうですけど、
そういった時には、自分が体験したことを見つめて、
自分の中に位置づけていく作業を
内面でしていることになります。
ふんふん、「この体験って何だろう…」って
考える、みたいな?
はい。
私は大学の学生相談機関で相談を担当してきたので、
その臨床実践の中で、「青年期の自己感」などについても
関心を持っています。
結局それらは、「私」をどのようにこころにおさめていくか
ということがテーマとして共通している、と思っています。
「私」をどうこころにおさめていくか、ですか。
大学時代の悩みって、突き詰めてみたら、
「こんな自分をどうしたらいいんだろう」、
みたいな感じがあるもんなあ。
じゃあ、青年期の人たちの心理が、加藤先生の主な研究対象、
ってことになりますか?
いえ、またそういったこととは別の研究にも関わってますよ。
実は南極越冬隊員に対する心理調査を、
チームで継続的にさせていただいていたことがあって、
それも研究テーマの一つになっています。
南極越冬隊!?スゴイ!
そんな人たちの心理を調査するんですか?
それって、どんな研究ですか?
南極で約1年間、物の行き来がない中で
集団生活をしている越冬隊員は
長期の閉鎖環境下にあるといえますよね。
そういった環境でのストレスが
どのように統制されていくか、を
「可視化」をキーワードに研究をしています。
ん、確かにずっとおんなじ場所で集団で暮らしてたら
気が滅入るかも。
そういった、外からは見えない心の中のストレスを
見えるように研究してるってことですね。
では、次の質問デス。
大学院では、どんな授業をされているんですか?
幾つかありますけど、講義の授業としては、
「臨床心理面接特論」という、修士1年生の必修科目になる
心理面接に関する授業を担当しています。
じゃあ、臨床心理学専攻に入学すると、
1年目に加藤先生の授業があるんですね。
心掛けていることってありますか。
そうですね…実際に心理面接の担当が
まだはじまっていない人も多い時期の授業ですので、
できるだけ話の聞き方や心理臨床家としての態度など
共通項となる基本的な姿勢を学べるように、
そして面接に臨むときの思いを掬いとれるように
と思いながら授業をしています。
大学院に入って1年目だと、
実際に面接するってことになったら
きっとすごくキンチョーするんでしょうね。
頭の中が真っ白になって、どうやってお話を聞いたらいいか
分かんなくなっちゃいそう…。
私が大学院の時に、ある先生がおっしゃっていたのですが、
「クライエントの話を聞く」ということは、
手に喩えれば、手のひらの部分で、
様々な心理療法が、それぞれの指だ、と。
だから、みなさんの手の平の部分を作る作業を
ともにできたらというイメージで授業を行っています。
そっか~。
しっかりとクライエントさんの心を
キャッチできるような手のひらを
作るって大事ですよね~。
あと、話を受け止めるだけではなくて、
臨床での体験を言葉にすることも必要ですね。
ですから、ケースカンファレンスでは、
事例検討をする中でどんなことでもいいから考えたことを
何か言葉にすることを大切にしています。
どんなことでもいいんですか?
ええ。とにかく言葉にしていく過程で、
事例についてさまざまな角度から検討できると思っていますし、
院生のみなさんや先生方の話から私自身勉強になることが多いです。
そうやって、自分の心理臨床実践に対する考え方や見方について
深まっていく気がします。
院生のみなさんにとっても実習をとおして
そうした言葉にしていくことで
自分の考え方に触れていく機会になれば
と思っています。
院生さんの成長を
すっごく意識されているんですね。
それに加藤先生自身が、今も学びを
深めようとされているのがステキです。
院生さんの研究指導については
どうですか?
私の問題意識のスタートは
授業中に経験した自分のデジャヴュ体験で
とても素朴な疑問からスタートしているので、
ゼミ生にも生活の中で体験した素朴な疑問や、
授業を通して感じたことを研究してもらえれば、
と思っています。
まずは各自の興味に沿って文献を読みつつ
自分の問題意識を深めていってほしいですね。
フーン、大学院生だからって
いかにも難しそうな専門用語を使って
ケンキューしてるぞ、ってことでなくてもいいんですね。
気張らず、飾らずに過ごせそう。
じゃあ最後の質問です!
他大学から樟蔭に来られて、樟蔭の臨床心理学専攻の魅力って
何だと感じていますか?
そうですね…大阪樟蔭女子大学大学院臨床心理学専攻は
先生方が、院生の皆さん一人一人に寄り添っていて、
心理臨床家として育てようとする熱意で溢れている、と感じています。
私も先生方とともにそうしたお手伝いができればと思っています。
いやいや、加藤先生のお話から
もう既に十分熱意をビシバシ感じますよ。
色んなお話を聞かせて下さって、ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
皆さん、今回の突撃インタビューは、どうでしたか?
私は加藤先生が、心理相談に来る人にも、院生さんにも、研究で関わる人たちにも、それぞれの人たちの「私(自分)であること」に丁寧に関わりながら、一緒に歩んでいこうとされている姿が、と~っても印象的でした。きっと樟蔭での大学院の2年間は、加藤先生のその姿勢から、たくさんのことが学べることでしょう。皆さんも、ますます樟蔭で学びたくなりましたよね!