大阪樟蔭女子大学


 大阪樟蔭女子大学関屋キャンパスにおいて、平成7年度より開講している香芝市教育委員会共催によるオープンカレッジも、今年度で8年目を迎えます。
昨年度から関屋キャンパスは人間科学部及び短期大学部を開設し、心理・児童・応用社会領域の専任教員による文化講座を全6回開講しております。毎年香芝市 民の方々に多数ご参加をいただき、本学学生ならびに他地域の方々へも広く開講させていただいております文化講座は昨年度「人間科学を学ぶ」をテーマに開講 し、大変ご好評をいただきました。
今年度は「ココロを科学する」をテーマに心理領域を主体に研究している教員6名がそれぞれの専門分野の研究成果を一般の方々に講演させていただきました。
今後さらに皆さまのご意見を参考に、このオープンカレッジが充実していくよう努力していきたいと思っております。
■ 片山忠治 人間科学部長 ■

    教室前方のスクリーンに単語を呈示し、これを記憶してもらう記憶実験のデモをまず行いました。課題は10個の単語が連続で呈示され、これを記憶し、できる だけ多くの単語を書き出してもらうもので、この課題が10セット実施しました。各自で自分の結果の集計を行って頂き、自分の記憶実験結果を眺めてもらいな がら、記憶に関しての一般的な特徴について解説しました。まず、今回の記憶実験デモは「虚記憶」という現象を確認するためのものであることを説明し、虚記 憶とは、人間が複数の項目からなるリストを記憶する際に、そのリストが「縞模様、緑、割る、…」といった、スイカと関連するものであると、呈示されていな いスイカを、呈示されたと誤って判断してしまう現象のことを指します。今回のデモでも虚記憶が生起することが説明、確認されました。
さらに、系列位置効果についても説明しました。系列位置効果とは、人間が複数の項目からなるリストを記憶する際に、そのリストの最初の方、最後の方の項 目については、よく記憶できるが、中間の項目については記憶の成績が低くなる現象を指します。今回のデモでも系列位置効果が認められることが説明、確認さ れました。
 

   11月にしてはとても寒い中をたくさんの方においで頂きました。私は、摂食障害について精神科医の立場からお話させていただきました。現在では、いわゆる拒食症と過食症をあわせて摂食障害とよんでいます。
1966年にトゥイギーという妖精のような少女モデルが来日したことをきっかけに、我が国でも若い女性を中心に拒食症が爆発的に拡がっていきました。その 後10年あまり遅れて、やせていることに価値を置くような文化がマスコミを中心にひろがり、競争的な社会から受けるストレスや家族関係の変化に伴って、む しろ過食症がふえてきました。そして、最近では思春期に限らず、子どもから初老の女性、さらに男性にまで発症が拡がってきています。
これら、二つの病態について、その診断基準、(身体的、心理的、行動面の)症状、原因となること、性格的な素因、家族の状況、治療法、予後など、臨床の 経験をもとにお話ししました。さらに、一人で食事をとらざるを得ない子どもたちの描いた、さびしい食事風景の絵を幾つかご紹介しました。どんな病気でも、 早期発見、早期治療が大切なことは言うまでもありませんが、どうしたら予防出来るか、そして自分たちの周りを見直すことで予防することはそんなにむずかし いことではないかもしれない、という希望についてお話しました。
 

   更年期は、女性ホルモンの分泌が急に減少し、ホルモンバランスが乱れ、そのために心身に様々な症状を引き起こしてくる時期です。講演ではまず、女性ホルモンのしくみや、更年期に起こってくる体の変化についてお話しました。
また、この時期には、子の自立、夫婦関係の問題、親の介護、親の死、若さの喪失、健康への不安など、日常生活の中に著しい変化が起こります。このような環境の変化に対する戸惑いが心に大きく影響します。更年期の「うつ」がおこってくるのです。
うつには、一日中気分がふさぎこむ、体重や食欲が大きく変化する、非常に疲れやすい、自分はだめな人間だと思い込んでしまうといった症状があります。うつ の症状は薬で多く改善することから、早めに医療機関を受診することが大切です。また、心の危機を乗り越えるには、物事をプラス思考で考えることが大切です し、自分の感情や行動をコントロールする感覚や、他人とのコミュニケーションも重要です。家族のサポートも必要で、励ましたり心配しすぎるのはよくありま せん。
更年期は、女性にとってこれまで保持してきた生活環境や価値観の転換を強いられる時期です。自分の体と心を新たに見つめなおす時期であるといえるでしょう。
 

   「攻撃性」をテーマに講義を行ないました。
まず、人間の攻撃性と言っても多様な形態が考えられ、例えば暴力や罵倒などの表出性の攻撃から、無視や自傷行為など他者に顕在的に向かわない攻撃性まで、どこまでを攻撃性に含めるかは定義的に難しいことをお話しました。
そこで、攻撃性を「行動」「感情」「認知」の3側面から考えてみることにして、それぞれの領域に関連する研究や実験を紹介しました。また攻撃性の抑制につ いても3側面に分けて考え、それと同時に「攻撃性は一様に排除されるべきものか」というテーマについても触れました。
最後に、「キレる」という現象について、攻撃性の文化比較研究から一考察を加え、近年の日本人高校生に見られた攻撃性の特徴、即ち相対的に攻撃行動は抑制 するものの怒りと敵意が昂じていることを、解説しました。結論としては、攻撃性が肯定的な社会行動につながるか否かは、それが表出される対人関係の基盤に ある関係性が鍵となってくることをお話しました。講座に出席された方々は熱心に聴講され、質問も非常に核心的な問いで、講座の内容をよくご理解されていた ことが窺えました。また、講座終了後も何名かの方が質問に来られ、関心の高さと熱意がひしひしと感じられました。
 

   14万人近い子どもが不登校の状態にある現在、もはや不登校は一部の特別な子どもや家庭の問題ではなく、誰にでも起こりうる出来事と考えられるようになってきています。
ところが、今でも不登校の子どもやその家族に対する偏見は残っており、当の子どもや家族が肩身の狭い思いをしている現状があります。
今回は、一般の人達に、このような現状を知ってもらうとともに、あらためて不登校とは何なのかということを見直してもらうきっかけとなればと思って話をし ました。具体的には、カウンセラーや臨床心理士が、不登校の子ども達と関わり、彼らを理解し、彼らが自分の生き方を創造していくのを支援しようと努める中 で、不登校についてどのような臨床心理学の理論が結晶化してきたのかということを、特に深層心理学を基礎として心理療法を実践する立場から話しました。そ の中で、我々は、原因を見つけてこれを正そうとするよりは、その子やその家族に不登校という出来事が生じている意味を考えていくという視点を大切にすると いうことを話しました。
また、不登校の意味や心理療法のプロセスで何が起こっているのかということをイメージとして理解してもらうために、あるマンガ作品を見てもらい、解説しました。
 

   リラックスのコツは「身体リラックスから、こころリラックスへ」の流れにあります。体がリラックスしないと、心はラクーニなりません。
すなわち、「緊張していけないと、思えば思うほど緊張がます」のが現実です。体の力みや緊張を体操をしながら、じょじょに抜いていくのです。
最初の実技は、リラックス体操から始めました。ストッレチをし、関節や筋肉の力を、体操の流れの過程でほぐします。次いで自律訓練法です。健常者やストレ ス関連疾患者のストレスをコントロールするために、よく使われている技法です。すなわち自律的(自己誘導的に行い、自己暗示を用いながら身体に働きかけ る)に、リラックスした状態へ、心理・生理的移行をおこさせる技法です。
  この状態(リラックスした状態であり、のんびりさせる神経が優位の状態)は自己正常化の過程を促進させるものです。技法の説明をし、コツ(息を吐く場合 に、ゆっくりと少しずつ、スーーーットいう感じ)について、練習をしました。公式2の温感練習を実技でマスターしていただきました。最後に、ストレス・コ ントロールへのヒントについて、お話しました。
 
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