大阪樟蔭女子大学

平成17年度オープンカレッジ文化講座「わたしたちのまちを見つめ直す〜家庭生活と育児の環境としてのまち〜」
ポスター 
平成17年度オープンカレッジ文化講座について
私 たちが生活をしている「まち」はいくつもの顔を持っています。家庭生活を送る環境としての「まち」、仕事をする場所としての「まち」、子どもが育ち、子ど もを育くむ環境としての「まち」、歴史を積み重ねていく場所としての「まち」、人々が憩う場所としての「まち」。今年度のオープンカレッジ文化講座では、 そんな「まち」の顔の中でも、とくに家庭生活と育児・教育の環境としての横顔について、歴史の中の家族と暮らしぶり、地方政府の活動、市民の描くまちの自 画像、育児・教育の実践の場としてのまちや人々、などさまざまな観点から考えていきたいと思います。

中井歩
2005年10月15日(土)10:30〜12:00
 
ゆりかごタウンと行政〜子育て支援政策の観点から〜
大阪都市圏に通勤する勤労者たちの「ベッドタウン」として発展し、全国2位の人口増加(平成13−15年度)のただ中にある香芝市は同時に、通勤者の子どもたちが育っていく「ゆりかごタウン」でもあります。
1990年に合計特殊出生率が1.57を記録した「1.57ショック」以降、日本社会が急速に少子高齢化する中で、政府は子どもを育てやすい/子どもが育 ちやすい環境を作ることに努力をしてきました。その1つが女性の就労と育児の両立を支援するための、保育サービスの拡大をはじめとする、育児の社会化で す。現在では子育て支援政策の対象領域は拡大し、とくに地域の「子育て力」を復活させる点で、地方政府に対して期待される役割も非常に大きくなっていま す。しかしながら、地域社会は行政だけが作り上げるものではありません。市民の自発的な活動やそれらのネットワークが、住みよい、子育ち・子育てがしやす い社会を作る原動力になるのです。
竹村一夫 人間社会学科助教授/専門分野:教育社会学
2005年10月29日(土) [10:30〜12:00]
 
市民から見た香芝市〜住みごごちに関する意識調査から〜 [意識調査の概要報告]
2004年に実施した香芝市民を対象とする意識調査の結果を報告した。
今回の調査は、景観・生活環境、交通・生活基盤,余暇・消費行動、就労、安心、医療・福祉、近隣関係の7つの領域から項目を構成したが、それらの項目から23項目について、結果を報告し、コメントした。
調査結果からは以下のようなことが明らかになった。香芝市の街並みについては、美しいと思うと評価している人が3人に2人いること、伝統的な祭りや行事よ りも、冬祭のような新しいイベントの方が参加経験は高いこと、職業を持っている人のうち、6割の人が通勤時間について満足していること、災害への対処に関 する情報が提供されていることを知らないという人がほぼ半数いること、緊急時の医療体制については評価が低いこと、近所づきあいについては、期待すること と実際の行為との間にずれがあること、全体的に評価すると、多くの人が香芝市を比較的住みやすいと評価していることなどである。
野中亮 人間社会学科助教授/専門分野:宗教社会学
2005年11月5日(土) [10:30〜12:00]
 
市民から見た香芝市〜住みごごちに関する意識調査から〜 [環境と住みごごちを中心に]
「市民から見た香芝市(1)」の続きです。この回では、香芝市民が香芝市について抱く「住みやすさ」の感覚を規定する要因について、考察を加えました。
この手の講座では、ややもすると分析結果のみを公開することに終始しがちですが、「市民意識」などという漠然としたものをどうやって把握するのか、また、 その際に必要となる「社会調査」とはどのようなものであるのか、というプロセスの公開・理解にこそ大学の講座らしさが出るものと考え、あえて細かい分析の 原理についても論じました。
分析の結果、(1)景観や騒音など狭い意味での住環境、(2)治安に関する不安、(3)自治会活動などの近隣関係の3つが「住みやすさ」意識に関連が深い と思われる要素として抽出されました。それぞれの要素がどのように「住みやすさ」意識に関係しているのか、インフラ整備や地域コミュニティのあり方等の議 論を通じて分析結果への解釈を加え、聴講者の方々との議論をもって講座を締めくくりました。
今津勝紀 岡山大学文学部助教授/専門分野:日本古代史
2005年11月12日(土) [10:30〜12:00]
 
古代葛城地域の人々と暮らし
現在は少子高齢化社会であるが、この対極にあるのが日本の古代社会であった。
大宝二(七〇二)年の御野国加毛郡半布里戸籍の人口構成は、典型的なピラミッド型をなし、試算によると、出生時の平均余命は男性で三二・五歳、女性で二 七・七五歳であり、大部分は四〇代で死亡し、五歳以下の乳幼児死亡率は五〇%を超えたであろうとされる。
戸籍の記載を「読み解く」と、戸主は妻を同籍するのが原則だが、戸主の妻と嫡子の年齢差がないような例が見られ、夫婦間の年齢差は男性の年齢が高くなるほど開く。つまり、戸主などの生き延びた男性は再婚を繰り返していた。
古代では婚姻をめぐる男女の対称性は崩れており、生き延びた男性が血縁連鎖の結節点となり、傍系親では不安定な対偶婚を繰り返す二重構造になっていた。こうした条件をもとに人口変動のシミュレーションを行った。
高橋裕子 児童学科助教授/専門分野:臨床心理学・精神保健福祉
005年11月19日(土) [10:30〜12:00]
 
心理職からみた子育て支援の実際〜子育ち・子育て支援の現状とこれから〜
子育て支援が推進される背景には、少子化問題がある。子育て支援の対象は、全ての親子であり、特に家庭で育児をしている人々への援助が不足しやすい現状がある。
臨床心理学的な立場から対人援助を行う心理職は、こころの問題を取り扱う役割にある。こころのレベルのみならず、子育て支援においては現実生活上の問題解 決も重要であり、保健師、保育・教育関係者、医師、看護師など親子の様々な問題に関わる諸機関との協力関係が必要となる。
心理査定と心理面接を主な仕事とする心理職は、保健・医療領域では発達の遅れや障害への相談・療育、福祉領域では児童虐待や子どもの心のケア、保育所・幼 稚園において子どもの発達上の問題や親子関係の相談などを行っている。今後は、児童虐待のみならず、発達障害や保育・教育、福祉領域の専門家との連携の中 で、援助者に対する心理的援助を行うことも重要であると考えている。
徳永正直 教養教育教授/専門分野:教育哲学
005年11月26日(土) [10:30〜12:00]
 
道徳教育を考える〜大人は子どもよりも道徳的に優れているか?〜
1997 年以後、文部科学省は「心の教育」に取り組み始め、学校、家庭、地域の連携の重要性を改めて強調するようになった。しかし、「良い子が危ない」と頻繁に囁 かれているように、その後も動機が不明確な未成年者による凶悪事件が目立っており、こうした現状への性急な対応として、2002年には『心のノート』が全 国の小中学生に配布された。だが、「道徳」授業をいくら充実しようと躍起になっても、授業でできるのは、せいぜい道徳的判断力と道徳的心情の育成へのささ やかな寄与程度にすぎない。むしろ、「行為によって学ぶ」(learning by doing)ことをもっと重視すべきではなかろうか。その意味でも、従来の全面主義を重視して、何か道徳教育にかかわるような事件が起こったときに、子ど もたちと真正面から向かい合って対話することが重要である。その際には、子どもたち自身の感性や思考力をもっと信頼しても良いのではなかろうか。「人間は 教育によって初めて人間になる」(カント)という自明の前提に対して、「子どもはようやく人間になるのではない。子どもはすでに人間である」(コルチャッ ク)という言葉の意味をじっくり味わう必要があるだろう。
主催:人間科学部学術研究会/共催:香芝市教育委員会

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