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主催:人間科学部学術研究会
後援:香芝市教育委員会 |
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若者の感情のもち方や動機づけのあり方が大きく変化しようとしている時代である。その原因として、現代の若者の多くが自分の過去の実績に関係なく、無意識
的に見知らぬ世間の人々をつまらぬ奴らだ、バカな奴らだと見下すことで自分を肯定する傾向―「仮想的有能感」をもつためではないかというのが私の仮説であ
る。
そこで、講演では、まず、仮想的有能感がどのような社会・文化的要因から形成されたと思われるのかについて個人主義の浸透、競争主義の激化、対人関係の
希薄化、ネット社会の到来などについて言及する。次に仮想的有能感が実際に日常生活にどのような影響を及ぼしているのかに関して、感情や動機づけとの関係
について調査的なデータを踏まえて解説する。さらに仮想的有能感が今後ますます増殖するとどのような社会が予想されるのか、また、親や教師としてそれを抑
止する手立てとしてどのような努力が必要なのかを考えたい。何よりも若者だけでなく、自分たちの心の中に多かれ少なかれ仮想的有能感が潜んでいることへの
気づきが重要に思われる。
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講師プロフィール
1947年愛知県生まれ。
名古屋大学教育学部卒。
大阪教育大学助教授、名古屋大学教育学部附属中・高等学校校長などを経て、現在、名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授。専門は教育心理学。
著書に、『他人を見下す若者たち』(講談社現代新書)『自己形成の心理−自律的動機づけ』(金子書房)、『動機づけの発達心理学』(共著、有斐閣)などがある。
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