大阪樟蔭女子大学

2009年2月11日(土)平成20年度大阪樟蔭女子大学現代GPシンポジウム「地域の子育て力の活性化」報告
安藤哲也氏 NPO法人Fathering Japan 代表理事

基調講演

カナダ連邦政府父親支援プロジェクト責任者
ティム・パケット氏「子どもと、家族と、地域を楽しむ、カナダの父親たち」

現在二児の父親でもあるティムパケット氏から、カナダ連邦政府父親プロジェクトのコーディネーターを務め、父親支援に長年携わってこられた活動実践の報告、そしてそれらから導き出された様々な理論についてデータを交えながら分かりやすく展開された。  

カナダの現状としては、共働き率が1976年から2005年の間に39%から69%へと増加したことにより、1970年代には父親の子育てにかける時間が母親の40%と半分以下であったものが1990年代になると67%に増加し、共に働き一緒に子育てをするというスタイルへと大きく変化した。この父親の子育て参加は、子どもに健全な乳幼児の発達を促すだけではなく、父親自身へも良い影響をもたらす相互の関係にあるという。パケット氏のプロジェクトは、子どもにとっての健全な心身の育成には何が必要でベストなのか、ということを実践しながら検討することである。カナダの父親たちはこのプロジェクトを通して積極的に子育てに参加し活発に活動している。父親の子育て参加で必要な側面として、子どもと関わる父親、世話をする父親、愛情豊かな父親、責任ある父親、生活の糧などの提供者、感動とやる気を与えてくれる父親という6つの側面が偏りなく、バランス良く保たれることが重要であり、子育て参加に『遅すぎることは絶対ない』と強調された。また、父親と母親では役割が違う。この区別を明確にした上で子育て方針をたてることが重要であり、父親が子育てに参加することによって、子どもだけでなく家族や地域へも良い影響をもたらすことができると提言された。  

パネルディスカッション

◆コーディネーター
・菊野春雄氏(大阪樟蔭女子大学子育て支援開発センター長)
・甲村弘子氏(大阪樟蔭女子大学子育て支援開発センター調査研究部門長)

坂本純子 NPO法人新座子育てネットワーク・代表理事

NPO法人新座子育てネットワーク・代表理事
坂本純子氏
「お父さんが盛上げる地域子育て。新座から全国へ」

 現代の父親たちが抱えているワークライフバランスの偏りからくる子育て不参加の問題に対して、お父さん応援プロジェクトをモデル的に立ち上げ、父親支援を新座から他の地域へと発信している。活動としては、流しそうめん大会ややきやき大会などを定期的に行い、それらの活動によって地域における家族のネットワークづくりに成功している。お父さんをよく理解し、お父さんにはお父さんのやり方でアプローチをしていって欲しいと坂本氏は語る。

西岡史恵 奈良県福祉部こども家庭局少子化対策室長

奈良県福祉部こども家庭局少子化対策室長
西岡史恵氏
「奈良県における子育て支援の取組について」

 子育て環境において日本が抱えている厳しい現状、奈良県の現状を様々な調査データを用いながら解説された。奈良県の現状としては専業主婦率が全国で1位であり、男性の帰宅時間の遅さは全国で最下位であるという。このことは、妻の子育ての精神的不安感・負担感、身体的負担感が夫の帰宅時間に悪い影響を及ぼすことからも深刻である。一方で、夫の家事・育児時間が増加した夫婦は第2子の出生が多くなっており、男性の育児参画が少子化に効果があると指摘された。また奈良県では結婚応援団やカナダの事業をモデルに父親の子育て参加促進事業など様々な活動に取り組まれている報告がなされた。

山崎晃男大阪樟蔭女子大学子育て支援開発センター教育開発部門長

大阪樟蔭女子大学子育て支援開発センター教育開発部門長
山崎晃男氏
「社会的学習としての地域参加」

 山崎氏は、父親になるということを学習する(学ぶ)という視点から心理学的立場で理論的に展開された。もともと父親になるということは遺伝子に組み込まれているものではないため、本来は生活する中で自然と学習していくものである。従来は、自分の父親や地域の共同体に参加し学ぶ環境があったが、現代は家庭において父親を学ぶ機会が喪失してきているという。このことからも、地域の共同体の担う役割がさらに重要になってきていると山崎氏は指摘する。また地域の共同体は、部分的に参加するだけでなく、次世代へ向け世代交代をしていかなければならないものであると提言された。

2007年度現代GPシンポジウム活動報告

今回、カナダの実践的な父親支援プロジェクトから父親の子育て参画が子どもや家族、地域に及ぼす良い効果、また意義を学ぶ貴重な機会となった。海外の取組をそのままの形で日本へ取りいれていくことは難しいが、その地域にあった形で導入しつつ、一人ひとりが地域の活性化へ向けて意識改革をしていく重要性を感じた。

【参加者統計】
・参加(一般54名、教職員14名、大学生71名)
・性別(男性39%、女性61%)
・年代(10代6%、20代49%、30代13%、40代12%、50代7%、60代7%、無回答6%)
・地域(奈良県57%、大阪府11%、京都府4%、兵庫県11%、静岡県2%、その他15%)

大阪樟蔭女子大学子育て支援開発センター長 菊野春雄

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