大阪樟蔭女子大学

2008年2月23日(土)13:30〜16:30平成19年度大阪樟蔭女子大学現代GPシンポジウム男性の子育てを考える

安藤哲也氏 NPO法人Fathering Japan 代表理事

基調講演

NPO法人 Fathering Japan 代表理事
安藤哲也氏 父親の子育てを支える環境づくり

 Fathering Japan(=以下、FJ)の理念、活動について、体験談を交えながら楽しいトークが展開された。
安藤氏は、書籍販売と子育ての接点から、子どもたちと関わり、笑わない子どもの背後にいる無表情な親の存在、長時間労働により疲労感を募らせる父親世代への疑問などから、FJを設立された。Fatheringとは「父親であることを楽しもう!」という理念で、FJでは、子育てを通したお父さんの自立を目指し、お父さんによるお父さんのための事業を行われている。

 多くの男性は、自分が父親になるとは考えず、また、具体的な父親イメージももたない。女性は、妊娠、出産、子育てを通じて、母親になっていくが、男性は、子ども、子育てに対応できず、フリーズ、強制終了となる。このズレは大きく、離婚の原因ともなりうる。
そこで、FJでは、多様な父親像を提示するとともに、男性に対して「OSを入れ替えよう」(意識改革)と提案される。「子育てパパは仕事もできる」というのもその一つ。仕事と子育ては相反すると思われがちだが、子育ては、(1)タイムマネージメント、(2)問題解決能力(問題発生予知能力!)(3)次世代育成能力を高めることができる。ワーク・ライフ・バランスは、早く帰宅して、どのように過ごしたいのかという生き方の問題。仕事か家庭かの二者択一ではなく、仕事も家庭も、趣味も地域活動も、一つの鍋に入れる寄せ鍋理論を示し、一人ひとりが鍋奉行、ぐつぐつ煮ておいしく味付けしようと提案された。



パネルディスカッション


同志社大学言語文化教育研究センター准教授
中村艶子氏
ワークライフバランスと企業CSR

 様々な調査結果、統計数値を駆使しながら、欧米諸国はもとより隣国韓国と比べても、日本における固定的性役割分担意識が根強いこと、高等教育と就業が直結せず、人材投資の無駄が指摘される現状、女性の家庭責任、男性の仕事責任の過大さ、養育費、教育費の負担感、家庭と仕事の比重に関する理想と現実のギャップ等を指摘し、現代日本に特有の、仕事と家庭分担や子育てをとりまく問題について解説された。また、男性の育児休業取得率が0.5%に過ぎない現状を示し、育児休業制度の多様化、柔軟化などの処方箋や、啓蒙活動の重要性が指摘された。


女性ライフサイクル研究所
前村よう子氏
女性から見た男性の子育て

 女性にとって過大な家庭責任、子育て責任、企業が父親を家庭から奪い、男性自ら家庭より仕事を優先しているといった背景から生じる問題を女性の心の声を代弁しつつ指摘された。子育て、家事をやっているつもりになっている男性の意識と行動、男性が子育てするメリットなどの指摘は、安藤氏の考えと一致している。従来、地域活動や家庭が、女性がいてこそ成り立ってきたことを評価し、今後のあり方について提案された。


株式会社 ダスキン
伊東孝氏
男性から見た父親の子育て「育児休暇の経験から」

 「子育てパパは仕事もできる」との考えの元、育児休業取得率0.5%のうちの一人として、男性にとっての育児休業の意義が提起された。育児休業の中での様々な発見を通して、育児休業は、自分自身や人生の再確認、自分と家族のための投資であるという。周囲に応援してもらえるか、自己管理できるかといった男性の意識や心構えの問題や、育児休業するにも経済的余裕が必要、早く復帰しなければというプレッシャーなど育児休業制度を活用しにくい背景、制度の限界についても指摘された。



2007年度現代GPシンポジウム活動報告

今回のシンポジウムでは、安藤氏から受動的で義務的な父親の育児参画ではなく、能動的で自ら父親を楽しむことの重要性が指摘された。中村氏からは日本における父親の子育てを困難にする社会の現状とその原因について報告がなされた。前村氏からは男性と女性の子育てについての意識の違い、そしてそれを克服するためのコミュニケーションの大事さが提案された。伊東氏からは、男性が育児休業を取ることの難しさと育児休業から得ることの重要性について報告がなされた。これらのことから、日本における男性の子育ては、他の国に比べ遅れていること、さらにこの男性の子育ては個々の家庭の問題だけでなく、日本社会全体の問題であることが示唆しているように思われる。そして、この問題の改善が、日本の将来に生じる問題に解決にとって重要な手がかりになることが示唆された。
【参加者統計】
・参加(一般67名、教職員22名、大学生19名)
・性別(男性53%、女性参加者47%)
・年代(10代15%、20代36%、30代14%、40代12%、50代6%、60代12%、無回答5%)
・地域(奈良県41.5%、大阪府41.5%、京都府6.2%、兵庫県3.1%、その他1.5%)

 次年度は教育プログラムや子育て支援開発センターにおける調査研究活動で得られた資料やデータを元に「地域の子育て力の活性化」をテーマとした地域における現状を報告し、行政・企業および地域の方々とともに、地域ぐるみの子育ての意義とそのために何が必要であるかを考え、実際に地域の子育て力を活性化させる契機としたい。
 また、本学学生にとっては、地域での子育ての現状や課題に触れることで、今後の学問研究や様々な実践活動への強い動機付けにしたいと考えている。

子育て支援開発センター長 菊野春雄



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