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【臨床心理学専攻】対象関係論を学ぶ初学者のための事例検討会が行われました

2019年10月28日

 2019年9月16日,大阪樟蔭女子大学大学院根本眞弓教授の主催で,「対象関係論を学ぶ初学者のための事例検討会」が行われました。この会は,日本を代表する精神分析家である京都大学名誉教授の松木邦裕先生を講師にお迎えし,対象関係論を学ぶ初学者のための学びの場として年に1度,開催されています。今年度は,京都教育大学准教授西村佐彩子先生と,甲子園大学専任講師真崎由美子先生にもご協力いただきました。

 これまで本学のクライン研究会のメンバー(院生,研修員,修了生)と,京都大学,京都教育大学,甲子園大学の精神分析に関心のある大学院生,修了生が中心となって行ってきた会ですが,今年度からは,クライン研究会に限らず,本学の精神分析に興味を持つ院生,修了生や,京都先端科学大学大学院の院生も加わりました。

 この会は,松木先生による講義と事例検討会で構成されています。今年度の講義は「内的対象を知ろう」というテーマでお話しいただきました。

 たくさんの著書があり,ご高名な松木先生の講義ということで,どんな難しいお話なのだろうかと緊張していたのですが, 最初に,スヌーピーに出てくる毛布をもった男の子ライナス取りあげ,実際母親がそばにいない時の乳幼児が,指を吸ったり毛布を持ったりして「良いお母さんと一緒にいる」内的世界を作ることについてお話ししてくださり,初学者でも安心してお話についていける入り口を作ってくださいました。

 私は今回,松木先生の講義への指定討論の役割を担いました。「内的対象」とは,私たちの心の中に取り入れられた「外的対象」であるとのお話しでしたが,「自分の視点からしか物事を見られないのに本当に外的対象は存在するのか,内的世界を変化させるためにはどうしたら良いのか」ということを質問しました。松木先生は,自分の見ている世界は,現実にそうなのではなくて,自分がそう見ているだけの世界であると自覚することがまず大事なのだと答えてくださいました。

 後半の事例検討会では,5~6人のグループに分かれて,それぞれのテーブルにシニアメンバー(対象関係論を学び始めて数年経ち,精神分析学会での発表経験のある方)がファシリテーターとしてついてくださり,全員が考えを述べやすいよう工夫してくださいました。このように小規模で一度意見を述べると,全体での検討に入った時に手を挙げやすく,この会で発言をすることで,いずれ外部の研究会でも発言していく練習にもなると感じました。

 事例検討会終了後には懇親会も開催され,先生方や他大学院の院生・修了生と話をしながら美味しいものを食べて楽しい時間を過ごすことができ,心理臨床の道に進んでいこうという決意がよりいっそう強まったように感じます。

(M2 伊藤)