読書、できれば長文を読みましょう!
2017年2月20日
早いもので2月如月も終盤になりました。寒暖の差が少しずつ出てきて、春近しを感じさせます。私の自宅近くの公園では、梅の花が咲いています。少しずつ季節は動いていますね。
さて今年度も「田辺聖子文学館ジュニア文学賞」の表彰式が来月に迫ってきました。以前のこの「学長だより」にも記載しましたが、この文学賞は芥川賞作家であり文化勲章を受章された本学の卒業生である田辺聖子先生に関する研究機関、資料館である本学の田辺聖子文学館が主催しています。今回で9回目となりますが、小説・エッセイ・読書体験記の部門で応募数が前回より増えました。特にこれらの部門は、豊富な語彙力と表現力が必要で文章全体の構成力も求められます。中高生の皆さんの創作意欲と能力の高さに驚くばかりです。
その文学賞作品集の挨拶文にも記載したのですが、読売新聞の「読解力が危ない」というシリーズ記事の内容に触れたいと思います。2月1日の読売新聞に「SNS没頭 長文読まず」のタイトルが記されていました。シリーズ3回目の記事ですが、15歳の読解力の日本のランキングが4位から8位に低下したという国際学力調査の結果が、紹介されていました。ランキングが低下した原因の一つとしてスマートフォン(スマホ)の普及に伴う長文を読む機会の減少を挙げています。スマホの利用時間が増える一方、読書量は減少しています。また、スマホの普及に伴ってソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が若者らの間に急速に広まったことにより、瞬時に短いメッセージを発信するために短文化や省略化の文章表現が求められているという背景も挙げられます。読書量が減少し長文表現力も低下することが懸念されています。
今回の文学賞に応募された中高生の皆さんは、新聞記事に記載のような懸念は関係ないことと思います。若いこの時期に読書を通して多様な考え方や感受性を養い、読解力および表現力を身につけることを、多くの若い人に心がけてもらいたいものです。これまでも「書く」ことを積極的にしてくださいと発信してきましたが、表現力が少しでもあれば「書く」ことを習慣づけやすくなります。その表現力は読書により身につくと私は思っています。
先日、仕事の帰りに電車に乗った時の光景です。車両の中、視野に入った20名くらいの乗客全員が携帯・スマホを見ていました。もちろん、全員がSNSをやっているのではないでしょう。中には電子書籍で読書をしている人もいるでしょう。両若男女問わず、スマホの普及が読書量の減少に起因していると言われている社会の縮図を垣間見た気になりました。どういう手段をとっても良いと思いますが、読書、できれば長文を読み、いろいろな世界や多様な考えに触れてみませんか?自分自身への反省の意味もこめて・・・
北尾 悟