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平成29(2017)年度 学位授与式 式辞

2018年3月14日

 平成29年度の学位授与式を挙行するにあたり、大阪樟蔭女子大学の教職員を代表して学部卒業生ならびに大学院修了生のみなさんにお祝いの言葉を述べさせていただきます。学位授与、そして、卒業おめでとうございます。
 併せて、みなさんの学生生活を支えてこられたご家族をはじめ関係のみなさまには、こころよりお慶びを申し上げます。
 また、後援会、同窓会をはじめご来賓のみなさまにはご多用のところをご臨席賜りまして、厚く御礼を申し上げます。

 卒業生ならびに修了生のみなさんには、樟蔭で学んだことをベースにして、これから新たな場所で挑戦、活躍されることを願っています。ただ、今後、世の中は日本のみならず世界規模でその変化、動きがどんどん加速化されていきます。当然、みなさんの生活にも影響を与えることになるでしょう。様々な技術革新の進展が生活の様相を変える可能性があります。その一つとして、人工知能、AIが挙げられます

 ペッパー君などAIを搭載したロボットが生活の様々な分野に進出しています。家庭内においては、会話型のAIスピーカーが脚光を浴びています。また、就職の採用面接でもAI搭載のロボットが面接官を行う企業も出てきています。みなさんの中でもロボット相手に面接を受けた人がいるかもしれません。
  そして、AIロボットによって将来なくなる職業リストも発表されています。マニュアルに基づいた機械的なやりとりで事足りる単純作業は、今後、確実にロボットに置き換えられるでしょう。ファーストフードのカウンター業務などは、人ではなくロボットが担う可能性が十分考えられます。自動運転の車が開発されていることを考えると、タクシーやトラックドライバーという職業領域にAIロボットが進出してくる日が近いのかもしれません。このような話を聞くと、「AIが人の仕事を奪うのでは?」というネガティブな未来を想像してしまいます。果たしてそのような世の中となるのでしょうか?
 先ほどのファーストフードのカウンター業務を例にとって考えてみましょう。来店したお客さんのオーダーを受け取り、食べ物を提供する、そして料金を受け取るなどのことはAIロボットで対応可能です。しかし例えば、お客さんが急にオーダーの変更をしたり、急いでいるから早くしてなどの要求を出してきたり、あるいは店が混んできて多くのお客さんから同時に苦情を言われたりした場合、ロボットで対応できるのでしょうか?またあってはならないことですが、店舗が火事となった場合の誘導などをロボットに任せっきりにできるでしょうか?

 つまり、瞬時の判断や状況に応じた対応などにロボットはまだまだ柔軟に適応できないのです。もちろんこういう場面、場面の機会学習、最近ではディープラーニング、深層学習という言葉もありますが、多くの経験を積み重ねることでロボットの対応能力は向上するでしょう。しかし、人間社会においては無限ともいえる場面、場面があります。時代背景やトレンド、そして人々の考え方など心理特性は常に一定ではありません。状況が刻一刻と変わることを念頭に置いていなければ対応できません。ですから完全にAIロボットに置き換わることはありません。AIはあくまでもツールです。このツールを使う主体は人間です。

 このような世の中の動向から、これからどう考え行動していくか、各々の生き方が問われています。AIロボットに任せていくことと人間がやるべきことを明確に認識していくことが必要です。ファーストフードのカウンター業務でも分かるように、人間として、人とのコミュニケーション能力の向上が求められます。事務的な単純作業はロボットに任せて、人間として、本来その仕事でなすべきことをしっかりと考え行動することがますます重要となってくるでしょう。

 では、人とのコミュニケーション能力を高めていくにはどうしたら良いでしょうか?この能力は一朝一夕に向上するものではありません。いろいろな経験が必要です。その経験を通した能力アップのポイントは、「相手の良い面を認める」ことだと私は思います。たとえどんなにコミュニケーションが取りづらい人でも、どこかに良い面が必ずあります。100%全てを良く見ようとしなくても構いません。しかし、自分より必ず良い面、優れている面が、何かしらどんな人でもあるはずです。それを見つけて理解して、付き合っていくうちにコミュニケーションが徐々に取れてくるのです。お互い認め合い、リスペクトすることがコミュニケーション能力向上の秘訣だと思います。

 平昌オリンピックでは日本選手の活躍に日本中が湧きましたね。現在もパラリンピックで健闘をしています。多くのメダリストが誕生しましたが、特にチーム種目であるスピードスケート女子のチームパシュートやカーリング女子の頑張りには目を見張るものがありました。チームワークが求められるこれらの競技では、チーム内の信頼関係がなければなりません。お互い、できること、やるべきことを確認し、練習を重ねていく。そこにはお互いリスペクトしあいながらコミュニケーションを高めていったのでしょう。このことはチーム種目のみならず個人種目においても同じです。選手以外に、競技面またはメンタル面でのコーチ、トレーナー、あるいは食事栄養面をサポートする管理栄養士など多くの人たちから成るチームとしてのコミュニケーションを高めていき、オリンピックという晴れの舞台に立つことができたのです。
 オリンピックを例にとりましたが、相手を認めリスペクトし、コミュニケーション能力を高めることは、ある目標、目的に向かって社会生活を送る上で重要であることを示していると思います。それは、どんな目標、目的、どんな場面でも同じです。

 今年度、樟蔭学園は創立100周年を迎えました。大学では、2030年に向けてグランドデザインを提示し、「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」をスローガンに掲げました。ここで言う「美」「美しい」とは外見のみならず、むしろ内面の美しさを意図しています。その内面の美しさをもって社会で活躍する人を育てることを通して、大阪樟蔭女子大学は世の中に貢献しようとしています。コミュニケーション能力は真の内面の美しさがなければ培うことができません。今後、世の中はAIロボットをはじめ、情報分野を中心に技術がどんどん進歩していきます。あらゆるものがインターネットにつながる時代、モノを購入、所有するのではなく、コト(利用体験)に重きを置く価値観が広がりつつあります。今後、ますますコミュニケーション能力が問われ、個人同士が信頼しあう必要性が増してきます。

 このような未来社会の予測を考慮に入れ、本学は伝統のなかに社会に認められる大学となるよう、グランドデザインを提示しました。知性美・情操美・品性美を兼ね備えた卒業生が様々な場面で光輝き、自分の希望の花を咲かせてくれるよう、教職員一丸となって学生や院生を教育指導していきます。今後、卒業生のみなさんが「学んでいい大学だった」と振り返ってもらえるよう、新たな礎を築いていきます。みなさんには温かく、そして時には厳しく大阪樟蔭女子大学のサポーターになり続けてください。

 結びに、「相手の良い面を認め、コミュニケーション能力を高める意識を持ち続ける」、このことをみなさんへの「はなむけ」の言葉とし、「美 Beautiful」な人生を歩まれることを心より祈念し、私の式辞といたします。
 みなさん、改めて学位授与、そして卒業、おめでとうございます。

平成29(2017)年度 学位授与式

平成30年3月14日
大阪樟蔭女子大学 学長
北尾 悟

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