女性が輝ける持続可能な未来をコミットメント
2018年9月28日
先日、日本キャリアデザイン学会の研究大会・総会が開催され、その特別講演を本学客員教授の白井文先生がつとめられました。このことは、すでにニュースとして本学の受験生応援サイトに掲載しました。
「Experience never gets old~人生100年時代の生き方を考える~」というテーマで、ご自身の経験をふまえて、人材育成とキャリア形成について今後どう取り組んでいけば良いのか示唆に富むお話をされました。その中で、今後、女性が活躍していく世の中になるためには、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)の1つである「ジェンダー平等を実現しよう」が他のすべての目標にも関連しているので重要であり、SDGsの担い手として次世代の女性のエンパワーメントを高めていく必要があると強調されました。
我が国は世界に類をみないペースで人口減少が進んでいます。2060年には約9,300万人と現在の4分の3程度に減少するというデータもあり、さらなる高齢化と生産労働人口の減少が予想されています。生産労働人口減少への対応としては、海外からの移民を受け入れることも必要ですが、女性の就業率のさらなる向上が望まれます。2017年のOECDの調査によれば、日本の女性就業率は73.9%で加盟41カ国中26位です。若干改善されたという報告もありますが、年代と就業率のグラフからM字カーブと称されるように、結婚や出産を機に仕事を辞める女性が多い現状があります。また世界経済フォーラム2017年版の「ジェンダーギャップ指数」のランキングは114位であります。特に、経済、教育、政治の分野において諸外国に大きく後れをとっており、管理的職業従事者における女性の割合も13.2%と、アジアや欧米諸国に比べて低い現状があります。
日本ではいまだに根強く男社会が残っており、女性が抱える困難を解決しなければならない課題としての認識度が低いなど、社会全体に大きく横たわる根本的な問題が山積しています。しかし、生産労働人口減少への取組みとして、女性の就業率を高めねばなりません。2017年時点で262万人存在する女性の就業希望者は、我が国最大の潜在的労働力です。女性の活躍が進めば、優秀な人材の確保や新たな財・サービスの創出が期待でき、経済成長にもつながります。2015年のOECDの試算によれば、女性の労働参加率が2030年までに男性と同レベルになれば、労働参加率に変化がなかった場合と比較してGDPが約20%上昇するという試算もあるようです。
女性の活躍を推進していくには、当然のこととして男性も責任をもって関わる、つまりコミットメントが不可欠です。男女共同で働き方や教育の在り方も含めた考え方を変えていき、社会全体でワークライフバランスを重視した人生設計に基づいた女性の就業率の向上を図らねばならないと思います。生涯にわたる女性の働き方を変えるには、女性自らの生涯にわたる学び、学び直しの重要性が増してくるでしょう。これまでの教育体系とは視点や発想を転換した女性教育も必要になるでしょう。出産、育児を含めた学びやキャリアパスに関する学びをはじめとするこれまでに蓄積された教育研究資源を、さらに深みを増して教育展開していくことを、本学をはじめとする女子大学は求められていると思います。
文部科学省の受託事業「男女共同参画のための学び・キャリア形成支援事業」がスタートし、その研究協議会の企画委員に白井先生が就任されます。今後、白井先生と情報交換させていただき、女性が輝ける持続可能な未来を創出できるよう、歩んでいきたいと思います。
大学が社会に果たすべき役割は、「人材育成」と「知的創造活動」です。今後、大阪樟蔭女子大学は、社会に対する存在意義(ミッション・ポリシー)を提示し、その情報を地域住民をはじめとする国民に分かりやすく発信し、本学の社会で担うべき役割をコミットメントしていく必要があります。女性が輝ける持続可能な未来をつくりあげていくことが本学の使命であると考え、関西SDGsプラットフォームに参画し、2030年の目標に向かい持続可能な開発目標を支援し、その実現に向けて歩み続けます。
ところで、コミットメントの言葉と意味が似た英単語にエンゲージメントがあります。婚約指輪のエンゲージリングの正式名称はエンゲージメントリングです。本来は婚約相手にではなく、業務上の約束を履行するためにリングを渡すことから始まったそうです。何か事を行なうための約束をする証だそうです。お互いを信頼し約束をするということです。このエンゲージメントに「責任をもつ」という意味合いを強くした言葉がコミットメントだそうです。
決して、婚約指輪を渡すことに責任がないと言っているのではありません。誤解なきように。エンゲージメントも「深い理解と目的をもった建設的な対話」という意味が含まれています。
北尾 悟