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令和元(2019)年度 学位授与式 式辞

2020年3月14日

 令和元年度の学位授与式を挙行するにあたり、大阪樟蔭女子大学の教職員を代表して大学院修了生ならびに学部卒業生の皆さまにお祝いの言葉を述べさせていただきます。学位授与、まことにおめでとうございます。めでたくこの日を迎えられた皆さまを心からお祝いいたします。そして、皆さまの学生生活を陰ひなたになって支えてこられたご家族をはじめ関係の皆さまと喜びを分かち合いたいと思います。

 本来ならこの日は、令和最初の学位授与式として、ご家族の皆さまをはじめ教職員や来賓の方々など大勢が見守るなか、学位記を手渡し祝福したかったところです。ただ新型コロナウイルスの感染終息の見通しが立たない状況で、皆さまとお集まりになる多くの方々の健康を守り感染拡大のリスクを少しでも抑える観点から、100年会館において一堂に会して式典を行うことは難しいと判断しました。人生における1つの区切りである晴れの舞台を提供できず、まことに申し訳ございませんでした。

 今、世界中を席捲(せっけん)する勢いのコロナウイルスをはじめウイルスは、単独では増殖できません。子孫を残すには他の生き物の細胞に居候して、その生き物の力をうまく利用して生きています。生き物、つまり生物なのかそうでない無生物なのか、専門家でも意見が分かれるくらい巧妙な方法で地球上に生存しています。コロナウイルスの場合、くしゃみや咳など飛沫から主に呼吸器系の細胞にとりつき増殖すると言われていますので、とにかく大人数が密集する状況を避ける必要があります。

 人が集まることに注意を払わなければならないので、多くのイベントが中止となりました。となると心理的に人と会うことを自粛するムードとなり、コミュニケーションがとりづらくなることが懸念されます。コロナウイルス感染拡大が起こらずこれまで通りに世の中が流れたとしても、最近の風潮としてコミュニケーションがうまくとれず様々な問題が生じています。自粛ムードとなれば益々、コミュニケーション能力が問われるのではないでしょうか?いくらネット環境が良くなったとはいえ、他者と直接会って話す機会が少なくなることでコミュニケーションがとりづらくなり、社会生活の様々な場面に影響を及ぼすことは必至だと思われます。

 私はこれまで入学式や学位授与式での式辞、あるいは大学ホームページの学長だよりにおいて、コミュニケーション能力の重要性を述べてきました。4年前の入学式においても「自分」以外の人達とのコミュニケーションを図るためにも、まず「自分」とはどういう人間なのか、つまり「自分自身」を知るよう、学生時代に絶えず悩みながら考えてください、と伝えました。どうでしょうか?「自分自身」がわかりましたか?

 おそらくほとんどの人は答えが見つからないでいるでしょう。告白しますが、私自身も自分がどういう人間なのか、まだはっきりとわかっていません。一生、悩み考え続けるテーマだと思います。

 コミュニケーションを図ることに関しては、経験を重ねていくにつれて私なりにこう考えている、こういうふうに対応していると、皆さんへ伝えることが増えてきました。その1つに「相手の良い面を認める」ことが挙げられます。どんなにコミュニケーションが取りづらい人でも、どこかに良い面が必ずあります。相手のことを100%すべて良く見ようとしなくて構いません。ただ、自分より良い面、優れている面が、何かしらどんな人でも必ずあるはずです。それを見つけ理解し付き合っていくうちに、コミュニケーションが徐々に図られていくと思います。ほんの一部でも良いからお互いを認め合い、リスペクトすることがコミュニケーション能力向上の秘訣だと思います。

 また、不要不急の集まりを控えるようにとの要請も出ている状況を逆手に取り、じっくり本を読む、読書にいそしんでみてはいかがでしょうか?コミュニケーション能力を高めるには、実際に他者に会い他者を知る、そしていろいろな知識を得て、自分を知り価値観を築いていくことが通常考えられますが、本を読むことによって、様々な人に出会い、様々な場所を旅し、様々な考え方を知ることができます。そしてボキャブラリー、語彙の力も養われます。手っ取り早くコミュニケーション能力の基礎の基礎を学ぶことができ、自分自身を知るきっかけにもなり、価値観が養われ世界観も広がるはずです。

 かのマイケル・ジャクソンも言っています。「僕は読書が大好きだ。もっと多くの人に本を読むようにアドバイスしたい。本の中には全く新しい世界が広がっているんだよ。旅行に行く余裕がなくても、本を読めば心の中で旅をすることが出来るんだ。」と。

 昨年、大阪樟蔭女子大学は創立以来70年という歴史を刻みました。樟蔭学園も1世紀を超えた歩みを進めています。歴史と伝統を重んじながら、大学では、2030年に向けたグランドデザインを提示し、「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~美 Beautiful 2030~」をスローガンに掲げました。ここで言う「美」「美しい」とは外見のみならず、むしろ内面の美しさを意図しています。その内面の美しさを通して社会で活躍する人を育てることが大阪樟蔭女子大学の使命だと考えています。

 地球規模でのコロナウイルス感染拡大という閉塞感が漂うなか、また将来予測困難な時代が到来すると言われている昨今、より一層、自分の物差し・羅針盤を基に価値観を磨き続け、クスノキのように内なる輝きを発する人を育てることが求められます。1人でも多くの修了生・卒業生が社会で活躍できるよう、これからも社会に認められ存在感のある大学へと発展するよう努めてまいります。

 今年は暖冬でもうしばらくすると桜が早や開花すると予想されています。皆さまも「内面の美」を磨き続け、自分の希望の花を咲かせてください。

 「相手の良い面を認め、コミュニケーション能力を高める意識を持ち続ける」、そしてコミュニケーション能力を高める基本の基本として「本を読む」、ということを皆さまへの「はなむけ」とします。そして「美 Beautiful」な人生を歩まれることを心より祈念し、式辞の結びといたします。

 皆さま、改めて学位授与、まことにおめでとうございます。

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令和2年3月14日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

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