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令和2(2020)年度 学位授与式 式辞

2021年3月14日

 令和2年度の学位授与式を挙行するにあたり、大阪樟蔭女子大学の教職員を代表して大学院修了生ならびに学部卒業生の皆さまに式辞を述べさせていただきます。本来であれば、「学位取得、おめでとう」と祝いの言葉を表すところですが、敢えて今日は申しません。なぜなのか、私の式辞を聴きながら考えていただければ幸いです。

 しかしながら、今年度は新型コロナウイルス感染終息の見通しが未だ立たない状況下、皆さまおひとりおひとりのご努力を称えるとともに、皆さまの学生生活を陰ひなたになって支えてこられたご家族をはじめ関係の方々に深く敬意を表します。そして、集まる人数を絞った形式で学位授与式を挙行することになり、皆さまの思い描いていた式とは異なることについては、大変申し訳なく思っています。

 皆さまの学生生活最後の1年間は、ウイルス感染拡大の中、授業はもちろんのこと、自粛という名のもと、日常生活も変わり、ニューノーマル、新常態という言葉もよく耳にするようになりました。良かったことも中にはあったかとは思いますが、どちらかと言うと以前と異なる状況に、不自由さ、違和感や閉塞感に苛まれた人も多かったでしょう。しかし、ウイルス感染がたとえ完全に治まったとしても、今後は以前のような日常生活に戻ることはありません。この1年の経験を通し残るものもあり、違う新常態が現れる可能性が高いと思っていた方が良いでしょう。

 皆さまはこの4月から新たな気持ちで次なる人生のステージを歩み始めます。これからの世の中、前とは異なる新常態に出くわす局面となった時、それを前向きにチャンスと捉えられれば良いのですが、逆に違和感などを覚え、日常生活に変調を来たすこともあるかもしれません。違和感を持つこと自体はむしろ正常な感覚ですが、その違和感を引きずって生活することは避けたいものです。どうすれば違和感を解消し行動できるのか?私が普段から思っていることを述べたいと思います。

 まず何に違和感が抱くのかを明らかにし、それを自分なりに解消する材料となる様々な知識や技術などの情報を集めるのです。これが「学び」というものです。そして、得られた情報を基に自分に「問う」、そして答えを見つけていくという姿勢が大事です。「学び」「問う」、まさしく「学問」です。

 皆さまは各々の専攻、学科において「学問」を修め、本日、学位記が授与されました。「学問」を修得する術を身に付けたのですから、今後は幅広い領域にも応用して「学問」してください。情報を基に問い続け、自分で答えを見つけていく姿勢を続けていくと、自分の価値観、物差し、羅針盤となる自分軸を形成していきます。これからの世の中、自分軸をしっかりと持つことで、様々な困難に直面しても、ぶれずに自分で人生を切り拓いていけるはずです。最近、「違和感」をキーワードとするテレビ番組がありますが、是非、違和感を持ち学問を続けてください。

 冒頭、祝う言葉を申さないという意味が分かりましたか?そうです。少しでも違和感を持って聴いてもらいたかったからです。今日この日は1つの区切りではあるのですが、これからの長い人生をどう歩んでいくのか、これこそが大事なのです。

 今年の大河ドラマの主人公である渋沢栄一の言葉に「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」があります。人生100年時代、違和感を持ち、学問を続け、前向きに人生を歩んでください。この姿勢が、内面の美しさを形づくります。まさしくグランドデザイン「美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する」に繋がります。ひとりひとりが美しい花を咲かせてください。応援します。皆さまにエールを送って式辞を結びます。

mokuren2021.jpg令和3年3月14日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

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