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分けない、区別しない~diversity and inclusion~

2022年1月 28日

学長  北尾 悟

 令和4年、コロナ・オミクロンの感染拡大、いや爆発の様相でスタートしました。新規感染者数だけで一喜一憂すべきではないという意見もありますが、連日、ネットやテレビなどで数が大々的に示されると、普通の人の感覚では気にせずにはいられないという心情が正直なところでしょう。医療体制の崩壊は避けねばなりません。まずは自分でできる感染予防に努めましょう。

 昨年12月のあるテレビ番組で、印象の残った歌詞の楽曲特集をしていました。性別、年代によって様々な楽曲が紹介されていましたが、確か30歳代男性の選んだ楽曲に、THE YELLOW MONKEY(イエモン)の"JAM"が挙げられていました。私は思わず「ガッテン!!」と心の中で叫びました。自分一人ではなかったんだ、この感覚は・・・と。もう5年前になりますが、この学長室だより(2017. 01. 12)に"JAM"の歌詞『乗客に日本人はいませんでした、いませんでした、いませんでした』に衝撃を受けたことを記しました。「外国で飛行機が落ちました。ニュースキャスターは嬉しそうに」から続きます。

 日本人かそうでないか、分ける必要があるのか?このニュースに該当する立場になった場合、そのご家族や関係の方々の心配する気持ちは、国籍や人種に関係なく同じです。たまたま日本の放送だからニュースを視聴している人は日本人が多いのですが、違う国籍や人種の人もいます。また日本人でも外国の方々の友人がいる人もいます。結婚している人もいます。わざわざ日本人に言及した報道はどうなのだろう、とずっと思っていました。同じ感覚を持つ人々がいることを知り、少し安心しました。

 現在、私たちは、インターネットから瞬時に多くのニュースを知ることができます。今はコロナ禍のため国を超えた人の流れは制限されていますが、昔に比べれば人と人の交流は盛んです。境目がなくなっているという感覚です。そして宇宙旅行も夢物語ではなく現実のものとなりつつあり、国境という概念や捉え方も変わってくるでしょう。こういう地球規模の社会状況なので、自分が置かれている状況や環境とは異なる様々な人たちが存在し、異なる考えや行動様式があることを認識しなければなりません。世の中は自分が知らないことに満ち溢れています。最近、多様性~diversity~という言葉をよく耳にすることがありますが、まずは、このように多くの異なる事象、つまり考えや価値観が世の中にはあること、場合によっては自分の常識が通用しないこともあり得ることを自覚、認識する必要があります。このことが世間で言う多様性~diversity~を理解する一歩だと私は理解しています。
 次に、個々人の多様性~diversity~を認めたうえで社会全体を動かしていくには、個々人が個人として尊重された社会の一員として認められ、その違いを活かして力を発揮できるような環境整備が必要です。各々の力が発揮できる個々人が増えることで、社会全体の活力が高まるという考えが浸透しなければ、世の中は変わっていきません。このように、個々人の違いを受け入れ活かしていくことを、包括~inclusion~と言います。

 多様性と包括、diversity and inclusion。各々バックグランドが様々な個々人を認め合い、受入れ、活かしていく。素晴らしい、理想のあるべき姿だと思います。バックグランドの違い、それには、人種・性別・年齢など外面的なもの、宗教・価値観・性格・嗜好など内面的なものもあります。
  これらの違いを認識し、社会全体として活用することが果たしてできるのか?正直、なかなか難しいと思います。特に、包括~inclusion~を実践するとなると、かなりハードルが高いと思います。物事を斜に構えてみる傾向がある私は、理解していると言っている人たちの中には、表面上は分かっているふりをしているプリテンダーもいると思います。

 しかし、diversity and inclusionはこれから重要になってきます。これからの世の中、宇宙全体で情報や人・物が行きかうようになり、あらゆる事象が融合していきます。異なる事象がぶつかり合い穏やかに反応し合えば良いのですが、変に反応すれば爆発、暴発する恐れもあります。爆発、暴発を防ぐためにも、diversity and inclusionを少しずつでも理解し行動していかねばならないでしょう。では、どうすれば良いのでしょうか?
 物事事象を分けて捉えない、区別しないで同じ土俵、フィールドとして考えてみては、と私は思っています。分ける、区別するということは、必然的に、上下や優劣を生むことになります。お互いを思い合う、認め合うということは、理想を言えば、上下関係がないことを意味しています。単純なことではないと重々承知していますが、まずは、「分けない、区別しない」ことをモットー?にいろいろな事象に向き合おうと考えています。同じ土俵、フィールドに立つことにより相手の立場、考え、価値観が共有でき理解する一歩が開けると思います。共有することから始め、課題があればどう解決していけば良いのかというスタンスで臨めば、建設的な議論につながり実現化が図られるのではないでしょうか?そんな簡単にいくわけがない、と思われても構いません。少しでも理想を現実に近づけていくには、この方法が良いのではと思っています。

20210610.jpg 我が家の柴犬は、毎朝夕、いろいろな犬種の仲間と触れ合い(たまには吠え合っていますが)、夜はお気に入りのぬいぐるみなど自分の寝床にいろいろなものを受け入れ、毎日違った場所で寝ています。まさしくdiversity and inclusionを実践しています(こじつけ!)。

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