令和3(2021)年度 学位授与式 式辞
2022年3月14日
令和3年度の学位授与式を挙行するにあたり、大阪樟蔭女子大学の教職員を代表して大学院修了生ならびに学部卒業生のみなさんにお祝いの言葉を述べさせていただきます。学位授与、おめでとうございます。めでたくこの日を迎えられたみなさんを心から祝福いたします。そして、みなさんの学生生活を支えてこられたご家族をはじめ関係のみなさまと喜びを分かち合いたいと思います。
本来であれば、ご家族の皆さまをはじめ大勢の方々が見守るなか、学位記を手渡したかったところです。ワクチン接種や新薬の開発が進展していますが、いまだ新型コロナウイルスの感染終息の見通しが立っていません。このような状況の中、皆さまとお集まりになる多くの方々の健康を守り、感染拡大のリスクを少しでも抑える観点から、今年度も一堂に会して式典を行うことは難しいと判断しました。インターネット配信を通して、修了生ならびに卒業生へ祝う気持ちを伝えていただければと思います。
さて、皆さん、「Beautiful name」という楽曲を知っていますか?1979年にゴダイゴというロック・バンドが発表した曲です。この年は「国際児童年」にあたり、その協賛歌でもありました。その後、多くのアーティストがカバーし、CMソングとしても採用されています。また、昨年の東京パラリンピック閉会式にも使用されましたので、ご存知の人も多いと思います。
『Every child has a beautiful name.こどもたちは皆、素晴らしい名前を持っている』。名前の大切さをうたっています。こどもに限らず、老若男女(ろうにゃくなんにょ)、歌詞にあるように『ひとつの地球にひとりずつひとつ』名前が与えられているので、皆が平等で人権がある、ということを示しています。名前を知り呼び合うことで、相手に寄り添い、お互いの存在を認め合うことにつながります。
このように「Beautiful name」の楽曲には、「誰一人取り残さない~No one will be left behind~」で知られるSDGsの理念が表されています。また、多様な存在として、ひとりずつひとつの名前があり、そのひとりひとりを認め合い受け入れるという精神、まさしく「多様性と受容~diversity and inclusion~」がうたわれています。
みなさんは、これから人生の新しい舞台に立つことになります。これからの人生、今まで以上に多くの、そして、様々なタイプの人との関わりが増えていきます。人間はひとりでは生きていくことができない生き物です。自分以外の周りの人たちと関わりながら人生を歩んでいくことになります。よく言われることですが、他者とコミュニケーションしなければなりません。
コミュニケーション能力を身に付けるには、まず自分を知り、自分軸をつくること、そして、相手のことを知り、理解することが求められます。自分と相手、この両面への対応が必要です。
まず自分に関して述べてみます。自分を知り、自分軸をつくること。その最初の一歩として、自分には親から授けられた素晴らしい名前、「Beautiful name」があることを自覚することです。名前は赤ん坊だったあなたに対する親からの最初のプレゼントです。親の願いが込められています。その「Beautiful name」を起点にして、自分らしさ、存在意義を考えてほしいと思います。ただ、このことを実践することは難しいと感じる人が多いと思います。
そこで、もう一面である相手のことを知り、理解する方が、ハードルが低くアプローチしやすいと思います。相手も同じく「Beautiful name」を持っています。同じく親の愛情を受け、その名前を背負って生きているのです。相手の「名前」を覚え、その存在を尊重するよう心がけてみることです。相手への理解を深めていけば、その相手には優れた面が見つかるはずです。何か、自分より良い面が必ずあります。尊敬、リスペクトすると、相手は心地よい気分になります。その結果、その場の雰囲気が良くなり、最終的に自分自身にもプラスをもたらすことにもなります。
昨年の東京、今年の北京でのオリンピック、パラリンピックでは数々のアスリートの感動がありました。そこには自分を高めるとともに相手をリスペクトする精神が存在していました。
スポーツの世界に限らず、相手を認め褒めることは、社会生活を送る上で大事なことです。世の中、お互い、支え支えられて生きているのです。相手をリスペクトすることにより、自分とは異質のものを受け入れ、コミュニケーションが深まります。自分軸をつくることが難しい人は、相手へのアプローチからコミュニケーション能力を高めてみるのはいかがでしょうか?
繰り返しますが、皆が「Beautiful name」を持っているのです。今、地球上で悲しい出来事、争いが起きています。悩み苦しんでいる人たちがいます。これからの時代、お互いの存在を認め合う重要性が、益々高まってきていると思います。
「美 Beautiful」
2030年に向けて大阪樟蔭女子大学は、「美を通して社会に貢献する」大学になります、と宣言しました。「Beautiful name」を基軸として自分を知り相手を知る。こういう心がけが知性美・情操美・品性美に繋がります。皆さんなりの美を磨き、社会で活躍されることを願っています。
私もこの3月をもって学長の任を終え、新しい人生の舞台へと進んでいきます。同じ時期に人生の節目を迎えたということで、皆さんとは同士だと勝手に思っています。「Beautiful name」の歌詞には『名前、それは燃える生命』というフレーズがあります。名前を背負って一生懸命、命を燃やして生きているのが人間です。アニメ鬼滅の刃(きめつのやいば)の煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)の名台詞「心を燃やせ」を連想します。メラメラと燃えさかることも時には必要でしょうが、どちらかと言えば、こころに小さな灯(あかり)をともして、少しずつ前進していければと思っています。
修了、卒業される皆さん、こころに灯(あかり)をともし、共に前向きに人生を切り拓いていきましょう。
改めて、皆さんの学位授与、まことにおめでとうございます。
令和4年3月14日
大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟