学校案内

自分の進むべき道?

2016年5月20日

 新年度も早2ヶ月になろうとしています。ゴールデンウィークも過ぎ去り、学生のみなさんは本格的に勉学に打ち込む時期となりました。特に新入生のみなさんには、環境の変化に対応し学生生活を大いにエンジョイ(もちろん勉学が第一)してもらいたいと思います。

 昨年度まで入試部長として高等学校の進路の先生と話す機会が多かったのですが、時々聞かされる話として「受験する学部学科の学びの内容とその生徒の特性とのミスマッチ」があります。「この生徒の性格を考えたら、違う学科コースが良いんだけど・・・」、「自分の偏差値からこの大学、って決めてきたが、違う大学の方が合っているように思える」、とか「本人より保護者の意思で決めてくる」などがありました。当然のことながらミスマッチを防がねばなりませんし、そのようなことを避けるよう進路の先生たちは苦心しています。でもなかなかミスマッチを未然に防ぐことはできません。なぜなら自分自身のことが10歳代後半ではまだよくわかっていないからだと思うからです。マッチングの片一方が明らかでないと当然うまくいくことが少ないのです。実際、この年齢で自分自身の特性を見極め進路を決める人は多くないと思います。
 では、このミスマッチは仕方がないことでしょうか?私は若い時分のミスマッチは決して悪いことではないと思います。そしてミスマッチの程度を軽減する、言い方を変えれば、将来の自分の進路の軌道修正がしやすくなる心の持ちようを備えることができればそれで充分だと考えています。

 多くの受験生(高校生)は漠然と自分の興味のあること、あるいは関心のあることを中心として受験大学を決めていると思います。親や先生の言いなりで決めるよりは格段に良いことだと思います。ただ、この興味・関心がそのまま一生続くことは稀でしょう。人生を歩んでいくうちに変更することもあるでしょう。興味・関心と進路(仕事)とは別、という人もいるでしょう。でも興味・関心と仕事がなるべく一致した方が良いことは間違いないでしょう。肝心なのは変更するときの精神状態です。もし、人生の方向性(進路)を変えることになった時に、これまでの人生(学び)が無駄だったと自己嫌悪に陥ることは絶対避けてもらいたいと思います。これまでまわり道や遠まわりをしたことで、今の自分の進路が見つけられた、自分が成長したんだと思ってもらいたいのです。

 ここで、私自身の大学進学のことを恥ずかしながら触れたいと思います。私は、漠然と理系が格好が良いなあ~と思っていました(文系・理系の分け方は個人的には好きではないのですが・・・)。しかし数学の成績がおもわしくなかった。自分で受験雑誌を調べて農学部だったら他の学部に比べて偏差値的にそう難しくないし、数学の点数が芳しくなくても何とかなると考えました。そして生物の教科書かなんの雑誌で見たのか忘れましたが、DNAの二重らせん構造のモデル写真を見て、綺麗だなあ~と感じたのを覚えています。そこでDNAを取り扱う研究者になれれば良いなあと思うようになったのです。正直これくらいの気持ちで大学の受験校や学部学科を決めたのです。
 幸いにもとある大学の農学部に合格して進学したのですが、カリキュラムを見たところ遺伝に関する科目はあるけれどDNAの構造に触れるような科目が無いことがわかりました。いわゆる古典的な遺伝学しかなかったのです。学生実験や演習でも入学当初はDNAを扱うこともありませんでした。さあ、どうする?1年次の時は悶々とした学生生活を送っていたのですが、学生実験で行った「酵素」に何となく興味を持ち始めました。肉眼で見たところ何の変哲もない溶液(酵素液)とある溶液(基質)とを混ぜると違うものができてくる・・・。不思議な気分になりました。そこで対象をDNAから酵素に変えてみようと思いました。その後、DNAの遺伝情報をもとにして酵素たんぱく質がつくられていることを知り、両者が結びつき、益々面白味を感じるようになりました。卒業研究は、ミルクを固めてチーズをつくる凝乳酵素の精製(純品にすること)と諸性質をまとめたものでした。卒業後、酵素研究者が多く在籍しており、しかも遺伝子研究も開始していた某食品企業に就職しました。その後、縁があって本学に食品加工学の教員として採用され今日に至っています。

 4月1日の入学式の式辞で「自分とはどういう人間なのか?自分の個性とはどういうものなのか?」、自分をしっかりと見つめ、向き合って、自分を理解してほしいと、私は伝えました。私の履歴が参考にはならないかもしれませんが、いろいろなことを学生時代に体験、経験をし、自分自身の進むべき道を探してほしいと思います。縁あって入学した大学・学部・学科の学びを通して、自分の個性が活かせられないか?自分の進むべき方向と適応できないか?まずは考えてみてください。いろいろと考えながら日々、過ごしてもらいたいと思います。他人と比べないで自分自身で考える姿勢を持ち続けてください。たとえ学生時代に自分自身についての理解が深められなかったとしても考える癖をつけてもらいたいのです。この姿勢、癖がその後の人生に生きてきます。このことは、どんな人(年齢、性差を問わず)にでも言えることです。人間、一生、考え、感じ、時には大いに悩むものです。そのときはしんどいでしょうが、いずれ何らかの形で必ず自分のプラスになると信じていきましょう!これがミスマッチの程度を軽減する、将来の自分の進路の軌道修正がしやすくなる心の持ちようだと私は思います。

 さあ、みなさん、「自分さがし」の旅を始めてみませんか?

北尾 悟

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