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Values in life

2019年2月5日

190205.jpg 平成最後の正月も早、1カ月以上前のこととなり、この原稿を書いている日は節分、暦の上では着実に春に向かっています。自宅近くの団地の梅の花も咲きはじめています。

 最近、ダイバーシティー、多様性、という言葉をよく耳にするようになりました。高度経済成長時代は、同質な日本男子労働者が昨年より今年、昨日より今日、いかに多くの製品を産み出すか、戦争に負けて国を立て直し豊かになろうと同じ考えで仕事に従事していました。ただこういう時代は終わり、現代社会は、考え方はもちろんのこと、性も年齢も人種さえも様々な人々と同じ空間で仕事をしなければならなくなっています。

 異質な人々が同じ場所にいる状況で生産的な仕事をしていく、人生を歩んでいくには、多様な異質を受け入れる力、つまり「受容力」を養わねばなりません。受容する力を身につけるには、まず相手のことを知る努力が必要です。知らないと誤解が生じます。相手に対して配慮が足りなくなります。自分本位になり他人のことは文字通り他人事になるでしょう。場合によっては喧嘩になることも。

 このようなことにならないよう、自分と違う立場の人と真摯に向き合い、相手を「知ろう」とする態度や会話が多様性に満ちた世の中を生き抜くポイントだと思います。結果として人間関係を良くしていくことにつながります。真摯に向き合うには、まず自分と他人(相手)は違うということを改めて認識し、相手をリスペクトすることが必要だと思います。これまでもこの学長だよりや学位授与式での式辞などで記しましたが、どんな人でも必ず自分より優れていることがあります。その優れていることを見つけ、そのことにリスペクトして対話をすることが望まれます。もし、相手が自分のことを理解してもらえない場合は、相手の能力の問題ではなく自分自身の説明が不十分なのでは、という姿勢が大事になるでしょう。新渡戸稲造の言葉に「人を愛して愛の反響なきは己の愛の足らぬを証拠と知るべし」があります。他人のせいにするのではなく、まずは自分自身に問題がないのか謙虚な姿勢で向き合うことが求められるということです。

 立場の違う人に対して謙虚な姿勢で臨むということは、周囲の人を大切することを意味していると思います。そして周囲の人に感謝する気持ちを強く持つことにもなります。先月の女子テニス全豪オープンで優勝した大坂なおみ選手もインスタグラムでコーチをはじめサポートしてくれた多くのスタッフに感謝の言葉を記しています。その最後に、"Lastly, thank you dad for teaching me the values in life."と父親に対しても感謝の念を表しています。

 Values in life!

 おそらくテニスを教えてもらいプロテニスプレーヤーとして生きていこうという自分の人生の方向性を意味していると思います。ただテニスをプレーすることだけにとどまらず、テニスを介してどう人生を歩んでいくのか、考えるきっかけを与えてもらえたことが重要だと思います。自分自身で考え悩み、自分なりの人生に対する価値を作り上げていったのでしょう。自分の人生に対して何かに価値を見出しそれに向かって邁進する人は、当然のこととして人生における価値を大事にするでしょう。自分自身がそういう心境でいるので、周囲の人も価値を持っている、あるいは持っていないように見える人には自分の人生での価値を見つけてもらいたいと思っているはずです。ですから人を非難しないし相手をリスペクトするのではないでしょうか?大坂なおみ選手のインスタグラムはそのような気持ちが非常に強く表れていると思います。

 なかなかこういう心境になるのは難しいですよね。私もその境地には至っていません。ただ、こういう気持ち、考えを常に意識するように努めようとしています。
BGMに「嵐」の「感謝カンゲキ雨嵐」を聴きながら・・・~Smile Again ありがとう~

北尾 悟

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