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ニューノーマル「新常態」とは?
~アフター いや ウィズ コロナの時代~

2020年6月18日

 政府によって発令された特措法に基づく「緊急事態宣言」は、5月25日に全国で解除となりました。しかし、その後も日本国内での感染者ゼロの日はなく、社会経済活動の再開を望みつつ、何となく不安な日々を皆過ごしていることと思います。大学も一部の実験実習実技科目からキャンパス内での授業が行われるようになりましたが、原則として遠隔(オンライン)授業を継続し、感染リスクを少しでも回避する方策を取りながら対応しています。

 政府の専門者会議から「新しい生活様式」の実践例が提言されました。ニューノーマル「新常態」という言葉もしばしば耳にするようになりました。実践例には、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いという感染防止の3つの基本をはじめ日常生活のいろいろな場面での生活様式が示されています。その一例に、食事の際は「料理に集中、おしゃべりは控えめに」があります。1人なら構わないのですが、家族や友人と一緒に食事をする場合は、何か寂しいですよね。美味しい料理も味気なくなってしまう気分です。食事を味わうことで会話が弾み、コミュニケーションも進むのですが。。。。。。
 ただ、今回の新型コロナウイルス、ちょっと今までのウイルスとは違うようです。これまで人に感染するコロナウイルスは、今回の新型を含めて7種類あります。そのうちの4種類は一般的な風邪の原因の約10~15%くらい占めており、ほとんどの場合は軽症に終わります。「新型」とは言え、人類がこれまで遭遇したことのない全く「未知」のウイルスではありません。ですからウイルスの基本的な構造や感染から発症までの仕組みはわかっているので、それに応じた治療薬やワクチンの開発が進んでいます。
 しかしながら、感染しても症状が現れない、もしくは軽症で自覚がないということが、今回の新型ウイルスの一番厄介な点だと思います。そして治癒した人のなかにはあまり期間を空けずに再び感染する例も見られます。こういう事例からも健康な(健康そうに見える)人も感染拡大を引き起こす原因になるので、3つの基本をはじめとする「新しい生活様式」を実践していくしかないということです。「アフター、あるいはポスト」コロナと言う人もいますが、解明されていないことも多く、RNAウイルスは変異しやすいので、治療薬やワクチンの効果がすぐに現れることはなさそうです。このウイルスとは末永く付き合っていくしかないと感じますので、「ウィズ」コロナの表現が的確であり、「ウィズコロナ時代」にどう私たちは生きていくのかを考えるべきだと思います。

 私たちの日常は大きく変わりました。学生の皆さんはオンライン授業が継続しキャンパスに足を運ぶこともできず、友人とも直接会って話すことも難しい状況です。外出の自粛とともにスポーツイベントの中止、アルバイトもできない状態が続きました。ちょっと前までは考えられなかった状況となり、大きく様変わりした日常への対応に追われ、精神的にも不安定な人もいるでしょう。当たり前のことができなくなり、ストレスを感じている人も多いでしょう。SNS上ではいろいろな意見や発言が飛び交っていますが、中には自分本位で他人を傷つけるものも散見されます。普段なら友人や知人との何気ない会話のやり取りで、ちょっとした相談や意見交換ができますが、現状ではそういうことが難しいこともあるとは思います。ですが、こういう状況だからこそ、人としての立ち居振る舞いを基本とした「人間力」が求められのではないでしょうか?
 これまでの世界観、価値観が大きく変わる可能性があります。多くの人がこれまで常識としていたことが通用しなくなることが予想されます。非常事態、有事の際には、自分というものをしっかりと認識し、自分自身の中に倫理的そして美的な価値判断の軸を持つことが必要ではないでしょうか?自分の価値判断のものさしを持ち、周りの状況に流されず自らの人生を歩んでいかねばならないでしょう。

 またこういう状況だからこそ、人と人との関わりがより大事になります。この困難な状況を周りの人たちと互いに支え合い乗り越えていかねばなりません。人との関わりにある程度の制限があるので、コミュニケーションの質が重要となってきます。それには、豊かな言語表現のスキルが必要で、話し方も含めた日々の研鑽がより強く求められると思います。

 樟蔭学園では「樟蔭美」をコンセプトとして学園全体で教育プログラムを進めようとしています。大阪樟蔭女子大学は2017年にグランドデザイン「美 Beautiful 2030~美(知性・情操・品性)を通して社会に貢献する~」を提示し、学生の皆さんを教育面のみならず、学生生活全般にわたってサポートし、卒業後、美的センスを持ち社会で活躍、そして貢献できる女性を育てようと努めています。学生の皆さんにはキャンパスに集うようになれば、さらに樟蔭の良さを感じつつ成長してもらいたいものです。皆さんの素敵な笑顔を見ることを楽しみにしています。

 我が家の柴犬もこれまでの日常とは違うことを察知しているようで、時々夜中に遠吠えをします。ヒトと犬ではウイルスは感染しないようなので、彼とのソーシャル、いやフィジカル・ディスタンスを縮めてコミュニケーションを図ろうかと思います。

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令和2年6月18日

大阪樟蔭女子大学 学長 北尾 悟

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